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細野不二彦さんの『ギャラリーフェイク』10巻第6作・ロンドン編を読み直しました。屈指の名作だと思いました!

ギャラリーフェイク(10) (ビッグコミックス)ギャラリーフェイク(10) (ビッグコミックス)
(2013/01/01)
細野不二彦

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細野不二彦さんの『ギャラリーフェイク』10巻第6作・ロンドン編を読みました。

この作品は贋作の美術品を扱うギャラリー、『ギャラリーフェイク』を経営する美術商、フジタを主人公にしたマンガです。1992年から2005年まで、13年に渡り32巻の単行本が出ています。私はスピリッツで読み始めたのですが、途中からは単行本のみを買うようになり、今でも全巻持っています。

この第10巻は1996年にスピリッツに掲載され97年に刊行されたものです。ロンドン編は3回にわたり連載されたもので、フジタが秘書のサラ(実家はアラブの大金持ち)とロンドンに夏休みに行く話です。

仕事熱心なフジタは最初夏休みを嫌がりますが、エアコンが故障していることもありサラの熱心な誘いに乗ります。ロンドンの別荘は立派な大きな家で、フジタは最初は気が進みませんでしたがイギリス製の名車・アストンマーチンDB5に乗れるということであっという間に気が変わり、サラに付き合って観光に行ったりスーパーに買い物に行ったりします。

スーパーでたまたまフジタは旧友の、オークション会社のサザビーズに勤めるチャーリー・ニコルに出会い、翌日のオークションに参加することになります。チャーリーはサラを初めて見て気に入ってしまい、いろいろ粉をかけてきますが、フジタはそれに気づかず「ただの秘書だ」といったことにサラは傷ついてしまいます。

サラは幼い時に火事に会い、今でも腕に大きなやけどの跡が残っています。(この話はこの物語の第1巻で語られています)サラはそのことにコンプレックスを感じていて、このやけどのせいでフジタに嫌われているのだと思い込みます。

そのオークションは往年の女優のワードローブセールで、その女優の衣装や私服をモデルに着せてセリにかけるというものだったのですが、手違いでモデルのサイズが合わず、チャーリーは急遽サラにモデルになるように頼みます。

やけどの跡を気にしているサラは断りますが、「ウィドー・キラー(未亡人殺し)」と言われメイクアップアーチストの経歴を持つチャーリーは、上手にやけどの跡を隠す技術を発揮して全く気がつかないほどにしたため、サラもモデルになることを承諾します。

それと知らないフジタは、モデルとなって現われたさらに驚きます。そしてその様子も、妖艶であったりゴージャスであったり、まったく普段の子どもっぽいサラとは違い「女はある日突然化けやがる」とフジタは思います。そしてチャーリーに感謝の意を表すサラを見て、フジタは心がざわつきます。

その夜からサラたちの別荘に泊まりに来たチャーリーは、フジタの「ただの秘書だ」という発言を真に受け、さらに猛烈にアタックをかけ始めます。次の日チャーリーはサラをキュー・ガーデン(王立植物園)に誘い、そこに勤める叔母のメアリーを紹介します。フジタの気持ちが分からず落ち込むサラは、チャーリーが誘うロンドンらしい名所や音楽ホールを回るうちに、チャーリーに気持ちを開くようになります。そしてチャーリーは、さらにプロポーズをしたのです。

一方フジタは面白くなく一人でパブで飲んでいますが、そこで商談を持ち込まれます。ダーウィンがつくった植物標本を買わないかというのです。そんなものがあるのはキューガーデンしかない。フジタはその話をチャーリーにし、チャーリーは驚いてフジタに同行しますが、連れて行かれた賭博場で出会ったのは叔母のメアリーでした。

悲しむチャーリーを見て、サラはフジタに「なぜ相談してくれなかったのか」と怒り、姿を消します。チャーリーはメアリーをやめさせ、行方不明の標本のゆくえを探るよう依頼し、さらにサラにプロポーズしたためにサラが行方不明になったことを告げます。

フジタはショックを受けますが、先ずは標本を探すことにし、その買い主としてある有名な霊能者が浮かび上がってきます。イギリスは、スピリチュアルな先進国で、その霊能者も心霊術を操るので有名な人物でした。霊能者はフジタに高額を吹っ掛けますが、そのかわりにフジタにヒントを与えます。

「あんたの周りには悪霊や死霊がうんかの如く群れつどっている。しかしそのさらに向こうに光り輝くものが見える。それはあんたの悪業を浄化し、幸福をもたらす力を持っているようだ。ところがその大切なものをあんたは今失おうとしている」と。

そういうことを信じないフジタでしたが、藁をもすがる気持ちでフジタはその霊能者にヒントをもらいます。「水、船、あたり一面に濃い霧、そして光が見える。失せ物はきっとそこで見つかるはず」と。

フジタはアストンマーチンでブライトンの海岸や様々な場所を探しますが、見つかりません。そしてふとひらめいたフジタはテイト・ギャラリーに向かいます。そこには海と霧を描いた画家、ウィリアム・ターナーの作品が所蔵されているのです。

果たしてそこにサラはいました。フジタはサラを引き留めます。「オレは、美しいと思ったものしかそばに置きたくないんだ」と。

こうしてロンドンでの休暇は終わったのでした。

今読みなおしてみると、この連載は『ギャラリーフェイク』の中でも屈指の名作だと思います。

読みなおしていて気がついたのですが、私のイギリスやロンドンその他に対する知識、アストン・マーチンやココ・シャネルのワードローブセール、キュー・ガーデン、テイト・ギャラリーやターナーの作品などをはじめて知ったのはこの作品を読んでだったのです。あるいは知識としては知っていても、それがどういう位置づけの存在かということを知ったのがこの作品だった、と言ってもいいでしょう。

イギリスで心霊術が盛んだとか、サザビーズというオークション会社があるということは知っていましたが、そういうことを含めて一つの作品の中で完結させていて、これはよくできたロンドン案内であると同時に、物語の中でフジタとサラが急接近する一つの重要な契機にもなっています。

特にフジタが標本のゆくえを探しつつ、チャーリーの「ミス・サラにプロポーズした」という言葉を何度も反芻するカットバックの場面と、霊能者に「悪霊に取りつかれているけれどもそれを浄化しようとする光があり、それを失おうとしている」という言葉は、そういうことを信じないフジタをも動かす力を持っていて、その言葉に光を見出そうと探し続け、ついにターナーの絵の前でサラを見つける場面は感動的です。

読み直してみて、この『ギャラリーフェイク』は、自分にとって本当に大事な作品だったのだなと改めて思いました。

読み直せてよかったと思います!
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