個人的な感想です。

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阿部洋一さんの『バニラスパイダー』3巻を読みました。(3):博愛より偏愛、魔女が空飛ぶ箒と魔物を倒す蛇口。

バニラスパイダー(3) <完> (少年マガジンコミックス)バニラスパイダー(3) <完> (少年マガジンコミックス)
(2010/12/09)
阿部 洋一

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その(2)からの続きです。

しかし本当は津田は、ナクアを水野さんから切り離したら、ナクアになりきってしまっている水野さん=町は死んでしまうことを知っていて、それを補うためにオスで繁殖能力のないエレベターの紫苑を連れてきて水野さんと合体させようとしていたのでした。

ナクアを水野さんから切り離し、街を救うためには、紫苑を水野さんと合体させ、ツツジから失わせなければならない。

ナクアを分離させた時、苦しむ水野さんを見てツツジは動揺しますが、紫苑はそれを制し、水野さんとの合体をはじめます。それを見てツツジは紫苑を失うことを悟り、さらに動揺します。

動揺したツツジは、蛇口で水野さんと紫苑を切り離そうとします。それを花織が止めるのですが、実はまだナクアは完全に町と分離していなくて、エレベーターでやってきた変異エレベター達を食べつくし、まさに脱皮しようとしています。突然現れた津田は、水野さんと紫苑を完全に合体させてナクアを完全に切り離さなければならない、と言います。

しかしツツジにはどうしてもそれが出来ません。それを見た花織は蛇口を取り上げ、「私がやる!」と言います。

「ごめん、ツツジ!私も紫苑嫌いじゃない!だから私たちのために犠牲になってなんて言えない!けどね、それ以上に、私はツツジに死んでほしくないと思っている!私は、ツツジと一緒に生きたいの!」

花織が襲われるのを見て、ツツジは無意識のうちにナクアを切り捨てます。花織を救いだすと水野さんと紫苑は完全に一体化し、花を咲かせました。

「水野さんを見捨てた」ことを悔いているツツジに水野さんは「君は間違っていないよ」といいます。「君の存在を認めてくれる君の町を手に入れたという証拠だから。だから、私はもうきみの中に必要ないの。バイバイ」と。

地上に還ってきたツツジと花織。悲しげな顔をする花織に、ツツジは言います。「帰ろう。ぼくんち。すごくおいしい油揚げ、売ってるんだ」と。花織は言います。「それ、食べたい」と。

戻ってきた日常の中で、ツツジはいまだに、紫苑を失ったことを後悔しています。そして津田からの伝言を見て水野宅へ行ってみた二人は、そこに水野さんと紫苑が合体したような人間が立っているのを見つけます。股間をもにもにして。

書いていて、本気で感動しますし、読み直して見ると、本気でわけが分かりません。(笑小道具の使い方で、)

呉智英さんはこれを評して、「意味なしヤマなし落ちなし」などというのは構成力がないだけだが、この作品は「意味のない設定が山のように出て来るのに山も落ちもある」とその才能をたたえています。本当にその通りだなと思います。

そしてやはり、この作者さんの世界を貫いているのは、愛なんだと思いました。それも、博愛でなく、偏愛なのです。

身の丈に合わない、理念としての博愛など、誰も信じない。でも手に触れることのできる、体温の感じられるものへの愛は信じられる。その思想が徹底的に語られているのだと思います。

この話は、読みこめば読みこむほど面白いですし、深みにはまって行きます。身近なものを守るために戦う、というのはよくあるテーマですが、それを守るための武器もまた蛇口という極めつけの身近なもので、移動手段がママちゃりだとか敵もエレベーターだとか、「魔法使いや魔女が箒で空を飛ぶ」というレベルの深い民俗性すら感じさせるそれでこの構成力を表すというのは、まさに天才と言うしかないと思います。

少し前のエントリにも書きましたがやはりこの作品は打ち切りになったようで、とても残念なのですが、ネットを見ても根強い支持があったらしいですし、今でも別冊マガジンで『橙は、半透明に二度寝する』というオムニバス連載をやっています。(迂闊なことに、私は読んでいませんでした。ある分だけ読みましたが、やはりシュールな味わいです。)

でも本当は、『バニラスパイダー』のような長編を読みたいな、と思います。『血塗りリンゴと金魚鉢男』も読んでみようと思っています。

長々とお付き合いいただき、ありがとうございました!ぜひ実際の阿部さんの作品を、読んでいただきたいと思います!
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