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一色まことさんの『ピアノの森』24巻限定版を読みました!すばらしく晴れやかな一冊でした!


CD付き ピアノの森(24)限定版 (モーニングKC)CD付き ピアノの森(24)限定版 (モーニングKC)
(2014/05/23)
一色 まこと

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一色まことさんの『ピアノの森』24巻限定版を読みました!

24巻限定版はCD付き。2005年のショパンコンクールで優勝した地元ポーランドのラファウ・ブレハッチのファイナルでの演奏、ピアノコンチェルト1番が収められています。このCDと小冊子もすばらしいのですが、今回は内容の感想。それも、単行本化するときにかなり手が入っていますので、それを追って行きたいと思います。

24巻最初は216話「暗闇の中で」。23巻ラストでは、主人公カイの演奏が始まってしばらくして、会場の照明が落ちると言うアクシデントがありました。CDの解説を読むと、ここまで真っ暗ではありませんでしたが、実際に2010年のショパンコンクールで照明が落ちたことがあったのだそうです。しかしカイはいっさい動揺することなくピアノを弾き続け、一瞬乱れたオーケストラもカイのピアノをたよりに建て直して行きました。

単行本の4-5ページには見開きで真っ暗な中演奏するオケとピアノが描かれていますが、これは単行本での新規挿入です。連載ではこれはなく、ここに割られている台詞が6ページめにあったので、一つ台詞が減っています。そしてよく見ると、6ページめ左下に前にあった台詞、「たのだ」という文字が残っているのが見えます。これはチェックミスですね。そして16ページの「この一体感はなんだろう?この開放感は?」という台詞が「解放感」に変わっていて、これは開放感の方がいいと個人的には思いましたがどちらでもとれますね。そして第1楽章を演奏し終えたところで216話が終わります。

217話「私が生きる意味」は最初の扉絵が違います。連載ではロングでカイが描かれていましたが、単行本ではアップにされています。まだ照明は直っていません。第2楽章が始まりました。

217話のメインは回想。まず雨宮がカイと友達になったピアノの森を思い出します。雨宮は「カイ君と森で過ごしたあのひとときは僕の少年時代のすべてだった」と思います。そして阿字野の回想。ピアノの森でカイを見たとき、「もしかしたら私だけがこいつを本物に出来るのではないか。そう思ったときから私は私が生きる意味を得たのだ」と思います。「もしかしたら子を持つ親というものはやはりこんなふうにいとおしく思うものなのだろうか?」と。

そしてレイコの回想。「先生、あたしはどれだけ感謝しているか分からない。あのときからあたしは、私たち親子は、どれだけあなたに頼って来たのだろう」と。そしてカイの言葉を思い出します。「本当に阿字野を喜ばせることが出来たとしたら、俺が一人前のピアニストになるしかない。だったら俺はそうなるしかないじゃないかⅠ」と。

218話は「自分を信じること」。何度も何度も繰り返し描かれて来た、「森の端」での大変な暮らし。酒場で無理矢理働かせられながら、とにかくやるべきことのために前を向いて、勉強し、ピアノを弾き続けていたのでした。それでも森の端の大人たちはカイに次々と嫌がらせをし、阿字野は何度でも森の端に足を運んでカイの当たり前の権利を勝ち取って行ったのでした。

中学生のとき、カイは他の先生が、今の中学に入れるために阿字野が土下座までしたというのを聞き、たまらなくなって阿字野に訴えます。「俺は阿字野に土下座をさせてまで学校になんか行きたくない」と。この場面、少し台詞が入れ替わってますが、大きな違いはありません。阿字野はそこまでさせたと思うなら人の何倍も勉強してきっちり卒業しろ、と言います。「お前にピアノの才能がなければ私だって手を貸したりしなかったかもしれないよ。だがおまえのその才能を眠らせるわけにはいかない。そういうお前自身の持つ力が私を動かしているんだ。正真正銘、お前の力だ」と。「自分なんか信じられないよ。まだ何もなせていないのに!」というカイに、阿字野は「だったら私を信じろ」と言います。そういわれて、ようやくカイは少しずつ自分の力を自覚して行きます。レイコにカイは、「俺はもうグズらないよ。俺は俺の出来ることは全てやってやる。それを毎日積み重ねて行けば、自ずと結果が出る。それが必ず、自信になる」と。

照明はいつしか戻り、森の中でピアノを弾き続け、第2楽章は終わり、第3楽章が始まります。そして、阿字野は、「その森から、今こそ出るんだ!」と思います。

読み直していて思いますが、本当にこの24巻は、全巻クライマックスですね。すばらしい高揚感が、1巻全体を通して続いています。源氏物語のクライマックスの四帖が六条第の四季を奏でるのにも似た、すばらしい晴れやかさが続きます。

219話「森のファンタジー」ではカイが森で育つことによって身につけられた本当の能力が語られます。風に音を乗せたり、生き物を音で宥めたりする、普通では考えられない能力です。そして森の中のピアノを弾き続けますが、平地の国で育ったショパンの曲を弾きワルシャワフィルと演奏することによって、森を抜け、大きな空の下に出ることについに成功したのでした。

第220話「自由」。ついに森を出たカイのピアノはポーランドの平地を、大きな空を感じさせながら、まだまだもっと広がって行きます。「いちいち森に戻らなくても、森のピアノはいつでも俺の中にある」ということを自覚したカイは、何者にも遮られることなく、どこまでも自由に伸びて遠くへときこえて行きます。あのパンウェイが演奏を聴いて涙を流しているのが印象的です。街角でも教会でも酒場でさえ、世界に広がって行くカイの演奏がきこえてくるのです。阿字野は、私の求めた、自分の聞きたかったカイのピアノは、こういう音だったのか、と思います。「音楽はこんなにも自由だ」というのは作者の繰り返し発しているメッセージですが、このクライマックスでオケと観衆、そしてその周りに広がる世界を描いた絵の次のページに、宇宙に広がって行くピアノを弾くカイの絵が見開きで追加で描かれていました。単行本でなく、雑誌の大きさで見たい絵だなと思いました。

第221話「一緒に」。ピアノがコーダに入る中、カイは回想します。「俺は森の端という歓楽街で生まれた娼婦の息子だ!家からつながる森は俺の庭でそこに打ち捨てられたピアノは俺のかけがえのない親友だった。揉まれ戦い、そしてムチャクチャ愛された。仲間と大切な先生。平坦な道じゃなかったけど気づくといつも寄りそってくれる人たちがいた。いつまだって包まれていた」

この辺りがかなり絵が追加されていて、カイがピエロで一人でピアノを弾く場面、みんなで弾く場面、風船を見上げて現在のカイがピアノを弾く場面、と追加されています。そして見開きの「いつだって包まれていた」という絵では、風船の配置が変わって増えているのと、前を向いていたピエロが横を向き、服を直してくれるおばちゃんが一人追加されていました。そのあとの、「だから、だから今の俺がいる」という絵は、連載ではハードに弾いてるところですが、単行本では風船のイメージが残ってより温かい感じになっています。

コルトが「カイ・イチノセ…なんというピアノを弾くのだ」と思っているところ、2ページほど絵が追加されています。そして、コーダに入ってピアノが終わり、オケの後奏が続くべきところ、カイはピアノを和音で弾き続けるのです。これは連載で読んだときもさすがにあっけにとられましたが、実はこれも典拠があって、あのポーランドの巨匠ルービンシュタインが、実際にオーケストラと一緒に最後まで弾いたのだそうです。これも付属CDの情報でした。限定版でないと分からない情報が目白押しです。(笑)そして最後のページも、連載では1ページだったのが見開きになっているのでした。

第222話「阿字野」。すばらしい演奏に繰り返されるカーテンコール。他の演奏者たちも感動で涙を流したり、「参ったわね」と言ったりしています。審査員も仕合せな顔をするか、どうしたものかと悩んでいたり。その中でカイはただ一人、阿字野の姿を探していたのでした。「一刻も早くこの喜びを阿字野と分かち合いたい」と思うカイの目の前に、感動した聴衆の大きな見開きの姿が追加され、カイの喜びのあまりの不安を強調しています。そしてついに、バックステージにおりたカメラマンたちの放列の後ろに阿字野の姿を見つけ、抱きつくのでした。この最後の場面も、1ページが見開きになっています。

そして223話「番狂わせ」。カイは最初、阿字野の背広をつかんだままインタビューに答えていますが、「ワルシャワを離れるまで一緒にいる」という阿字野に安心して手を離します。まだまだ子供だと思いながら、「ここで離れる方がいい」と阿字野は思います。「でも今私が立ち去ることはないよ。だってカイが光の真ん中にいるこの幸せな光景を目に焼き付けておきたいじゃないか」と。

そしていよいよラストの演奏者、レフ・シマノフスキの出番がコールされます。不安を完全には解消できないまま、レフは最後のステージにたつのでした。

しばらくの間「ピアノの森」は連載をストップしています。最後に掲載されたのが4月3日発売の18号で、今年になってからはまだ3回しか掲載されていません。でもこれだけ丁寧に作られているのを見ると、かなり大変だったんだろうなあと思います。それだけに6ページのチェックミスは惜しいのですが。

本当に読んでいるこちらも幸せになる、そういう巻でした。この先どういう展開になって行くのか分かりませんが、この巻は本当に堪能させてもらいました!

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