個人的な感想です。

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「フラウマンガ大賞」で激賞されていた池辺葵さんの『どぶがわ』を読みました!


どぶがわ (A.L.C.DX)どぶがわ (A.L.C.DX)
(2013/11/15)
池辺葵

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「フラウマンガ大賞」で激賞されていた池辺葵さんの『どぶがわ』を読みました!

池辺葵さんの『どぶがわ』を読みました。この作品は、リヴァイ特集を読むために買った「FRaU」の企画、「フラウマンガ大賞」に取り上げられていて特に選考委員の方々が賞賛していた作品です。一人の老いた女性をめぐる6つのストーリーと書き下ろしのエピローグ。もともとは秋田書店の「エレガンスイブ」という女性コミック誌に連載されていたものだそうです。

住宅街の谷にある淀んだ川のそばの小さな緑地の小さなベンチ。どぶがわが放つ臭気の中で、毎日その老いた女性は洗濯物を干し、うつらうつらして一日を過ごしているのです。この女性がどんな人生を送り、どんな経緯でここに住むようになったのか、それは語られていません。この女性が見る夢の中で、そのヒントが少し語られるだけです。また、この女性をおそらくは嫌っていた男の子がベンチの隣に座ったときに語られた幼いときの記憶が、夢と現実の間のどこにこの女性の人生があったのか、を考えさせられます。

第1話では、どこかの国の貴族の令嬢の四人姉妹が食事をする風景、アボガドを食べて(なぜかわさび醤油で食べています)これからフォアグラを食べると言う場面。メイドのロゼッタが他の貴族からの招待状を読み、「子爵ではお話しにならない」なんて言いながら、パーティーのドレスを作る話をしていて、「普段からいいものを着ていないといざというときに着慣れなくて大変だもの」なんて話をしています。いったいどこのどういう場面なのかつかみがたく、変につじつまが合いません。そして姉妹の姉の顔にハエがとまり、ロゼッタがハエたたきを持って「お嬢様、お覚悟を」と言ったところで、女性の顔にペットボトルが当たるのです。

目覚めると、自分はどぶがわのそばの緑地の古ぼけたベンチに腰掛けた老女。子供が投げたペットボトルが狙いが外れてぶつかってしまったのです。女性はペットボトルを拾い上げると子供に投げようとするのかと思ったら地面に叩き付けます。叩き付けると言ってもペちっという感じですが。女性は干していた洗濯物を取り込み、よいしょと言って柵をまたぎこして、子供に「ちゃんと拾うて帰りなさい」と声をかけて去ります。投げた少年が拾おうとすると、もう一人の少年が「いいよほっとけよ。こんなくさい川、ゴミバコとかわんねー。あのばあさん、いっつもあそこにいんの。ボーっと。ほんまボーっと。」と言います。

女性はスーパーに入って行きます。「やだなんだかにおわない?」という声の中スーパーに入ると、アボガドが安くなっています。198円。それをしばらくじーっと見たあと、買ったのはもやしが二袋と豆腐、しめて128円でした。

女性は川沿いの道に並ぶ古ぼけたアパートの一室に帰り、見事に何もない部屋に10冊ほどの本が畳の上にじかに並べられた6畳間の、古いちゃぶ台の上の、電気をつけます。ちゃんと傘がついています。コンロでこれもちゃんとした雪平鍋で湯を沸かして、もやしをゆで、黒ごまと胡麻油で味付けをすると、もやしとお茶だけの夕食になります。

「フォアグラ食べるとこまでいきたかったなあ」と残念そうな顔をして、「あのガキども」とつぶやく後ろ姿が何ともいえない味わいがあります。

女性はちゃんとした押し入れからちゃんとした布団を出してきれいに敷き、枕元の本を読みます。壁にはちゃぶ台が立てかけてあります。並んでいるのは少年向け、少女向けの本(絵のない絵本、ハックルベリ・フィン、若草物語など)が並んでいますが、寝床の中で読んでいたのは「バベットの晩餐会」でした。


バベットの晩餐会 (ちくま文庫)バベットの晩餐会 (ちくま文庫)
(1992/02)
イサク ディーネセン

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これはとても素敵な本で、この女性の境遇と照らし合わせると凄く広がりが生まれる作品なのですね。「どぶがわ」を気に入った方はこちらもおすすめです。

朝になって女性が目を覚ますと、女性は再び洗濯物を入れた紙袋を手に、あのベンチに向かいます。

「谷底の臭気漂うこの川沿いに、私の楽園はある」

女性の幻想の中で、そこは広々とした館の庭の一角で、4人の令嬢の一人としてメイドと過ごす場所なのです。

見ている人たちがくすくす笑う中、女性は洗濯ひもを取り出して木々の間に張り、そこに洗濯物を干して行きます。そしてまたベンチに座ってうつらうつらするのです。

ペットボトルを投げた子供たちも、その風景を見ています。「ああいう不思議なばあさんがおるから「谷の子は」ってアホいう大人がおるんや」と少年の片方がつぶやきます。女性は仕合せそうな顔で夢を見ています。「いそがなおくれるぞ」子供たちは行ってしまいます。

1話はここまでです。

第1話はこのように主に「主人公」の女性を紹介する話だったのですが、2話からは女性をめぐる、というか自分の風景の中にこの女性がみえている人たち、例えばこの少年たちの話が語られます。

女性は貧しいのか、豊かなのか。何もない部屋でちゃんとした布団を敷いてナイトキャップに「バベットの晩餐会」を読む年老いた女性。どぶがわの公園で洗濯ひもを張り渡してうつらうつらしながらフォアグラを食べる夢を見ている年老いた女性。人の豊かさとはなんだろう、年を取るということはどういうことなんだろう、と考えさせられます。

一話一話、珠玉のような味わいがあるので、また2話以降の感想を書くかもしれませんが、でもこれでおおむねどんなお話かは分かっていただけるのではないかと思います。素敵な夢を見ることも、間違いなく人生の一部なのですね。
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