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池辺葵さんの『どぶがわ』を読みました!(2)第2話「フォアグラ」。とても素敵な話でした。


どぶがわ (A.L.C.DX)どぶがわ (A.L.C.DX)
(2013/11/15)
池辺葵

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池辺葵さんの『どぶがわ』を読みました!(2)第2話「フォアグラ」。とても素敵な話でした。

昨日書きました池辺葵さんの『どぶがわ』ですが、やはりとてもいい話なので、第2話以降も感想を書きたいと思います。

第1話のサブタイトルは「アボガド」でしたが、第2話のサブタイトルは「フォアグラ」。主人公の老いた女性は、フォアグラが好きで、第1話では夢の中で食べ損なって怒ってましたね。

第2話では、まず幻想の中の姉妹たち。せっかく作ったドレスでしたが、姉娘は太って入らなくなってしまい、妹にお下がりになることになってしまいました。

場面変わって、朝食風景。ベーコンエッグに、トースト。奥さんが紅茶を入れています。ご主人は実直そうな顔をして新聞を広げています。娘はバレエのチュチュに頭はシニョン。言ってきまーすと朝ご飯も食べずに飛び出して行きます。

娘は自転車で大急ぎ。通りたくないけど、「どぶがわ」のそばの道を走ります。そこには第1話に出て来た少年たち。一人がポストに手紙を入れています。おばあさんはいつものように、ベンチに座っています。追い抜いて行った少女の自転車には、補助輪が両側についていて、ぱーっと広がったチュチュにシニョンの女の子は鼻に洗濯バサミを挟んでにおいを嗅がないようにしています。

出かける男、奥さんに今日も遅くなるから晩はいらんぞ、と声をかけます。昨日のワイシャツを洗濯しようとポケットを確かめるとスナックの名刺。全く、と言う感じで教会の見える高台の住宅のベランダに洗濯物を干します。洗濯バサミに、スナックの名刺も干してあります。洗濯が終わると奥さんは一人で「フランス料理メニューカタログ」を読んでいます。

今日はバレエの発表会。娘の役は「わんちゃん3号」。みんな親が見に来るのですが、娘のお母さんは来ません。

お母さんは出かけます。フランス料理のメニューを一人ごと言いながら。一方その夫は市役所で課長として働いています。そしてさっきの少年が出した手紙を読んでいます。「川辺をきれいにして川もベンチもなくしてください」と書いてあります。少年は、その谷底の風景や様子がイヤなんですね。課長はその手紙を見せる部下に一言「無理」と言うのでした。

奥さんは川縁の道を歩いて行きます。いつものように老いた女性はうつらうつらと夢を見ています。

夢の中で、上の姉である自分は絶食しています。あのドレスを着たいと。でもメイドのロゼッタが持って来たトマトのスープを一口食べて、「お肉がいい。フォアグラのソテーにして」と言います。それは寝言として、そばを通りかかった奥さんが聞いてしまいます。

「ピスタチオのナッツとポルト酒のソースで。フォアグラは薄めに切って、そう香ばしく焦げ目をつけて、そう両面にこんがり、分厚いと胃がもたれるから…」

とてもフォアグラなど食べそうもない、汚いどぶがわのそばのベンチで洗濯物を干しながら一日中居眠りをしている老婆の独り言を聞いて、奥さんは可笑しくてたまらず、そして昔のことを思い出したのでした。

それはお見合いの席。誠実で職場でも優秀、と紹介された男性は、まじめ一方の今の夫ですが、その席でのメニューはフォアグラで、男はそれはそれはおいしそうに、幸せそうに、フォアグラを食べていたのでした。「キミも自分で話したまえ」と促されて彼が言った言葉は一言。「フォアグラはお好きですかな」

奥さんはそれを思い出して、また可笑しくなるのでした。

一方発表会が終わった娘。お母さんたちに細々ほめられている他の子たちの中、一人で後片付けをしている少女でしたが、そこに主役の女の人が近づいて来て、「あんたさー、すごいきれいね。このライン。長い首と後ろ付きの肩。珍しいよ。いい武器持ってんね」と声をかけられたのでした。

何ともいえない幸せそうな、泣きそうな顔をする少女。寂しいな、と思っていたのでしょう。でもそこに、点から、誰にも与えられていない、何ともいえない不思議な幸運を与えられて、びっくりしているのかもしれません。どんなに頑張っても体型には変えられない部分がありますから、他の人にはないバレエに有利な首のつき方をしていると言うことは、天からのプレゼントとしか言いようがありませんね。

そして、その少女の首のつき方を、他の子たちとちゃんと描き分けているのも、素晴らしいなと思いました。

家に帰った奥さん。本棚に並んだフランス料理の本のうち、フォアグラの本が4冊並んでいます。そこに帰って来た少女。「レッスン楽しかった?」と聞くお母さんに、「うん、楽しかった」と言う少女。今日発表会であると言うことは、お母さんに黙っていたのですね。娘は口笛を吹きながら部屋に帰ります。

課長と部下は夜の街で話をしています。どうやら昨日の名刺は、部下が好きな女の人がホステスで、課長に一緒に言ってもらったようなのでした。奥さんに申し訳ない、と言う部下に課長は、「あれは私なんぞには無関心だ」と言うのですが、奥さんは冷蔵庫からフォアグラを取り出して包丁で切り、フライパンでソテーしてピスタチオのナッツでしょうか、をまぶしてポルト酒のソースでしょうか、をかけています。

そこに帰って来た課長。晩ご飯はいらんと言ったろ、と言いますが、出されたのがフォアグラであるのを見て二人で黙って食べます。奥さんが課長の顔を見上げると、そこにはお見合いのときと同じ、幸せそうな、嬉しそうな、何ともいえない満足げな顔でフォアグラを食べる夫の顔があったのでした。

奥さんはいいます。「私うっかり忘れてましたわ。あなたのことをとても好きだってこと」。

明くる日、ベンチに向かう年老いた女性。ベンチの上には、奥さんの本棚にあった「フォアグラ名人」の本が朝の光の中に置いてあるのでした。

とても素敵な話ですね。フォアグラなんて贅沢な食材だ、と思いますが、こんなふうに食べてもらえれば素敵だなと思います。おばあさんの様子とギャップがあるからフォアグラが浮き立つわけだし、寂しいのに慣れている娘が幸運を授かった不思議なできごとと、このフォアグラをめぐる出会いの取り合わせも素晴らしいなと思います。

そしてフォアグラを食べる男の、何ともいえない仕合せそうな顔。こんな顔をする男と一緒にいたい、と思ったことを思い出して幸せになる奥さんの顔。何もかもが上手く取り合わせられているなあと思います。

6話プラスエピローグのこのお話の一冊の中でも、私は特にこの第2話が好きです。いや、他の話もとてもいいんですよ。でもフォアグラと言うものの質感が、なんか素敵なものを思い出させてくれる感じがするのでした。

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