個人的な感想です。

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月刊アフタヌーン9月号でヤマシタトモコさんの「不呪姫と檻の塔(のろわれずひめとおりのとう)」を読みました!


アフタヌーン 2014年9月号 [2014年7月25日発売] [雑誌]アフタヌーン 2014年9月号 [2014年7月25日発売] [雑誌]
(2014/07/25)
沙村広明、藤島康介 他

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月刊アフタヌーン9月号でヤマシタトモコさんの「不呪姫と檻の塔(のろわれずひめとおりのとう)」を読みました!

ヤマシタトモコさんの作品を初めて読んだのは、『このマンガがすごい!2011』でオンナ編の1位2位を独占したのを読んだ時でした。『HER』『ドントクライ・ガール』の2作品でしたが、オンナの人の心の動きというか、そうなんだなあと思いながら読んだ覚えがあります。

この「不呪姫と檻の塔」は、アフタヌーンと言う男性向けマンガ雑誌に一挙102ページという特大の読み切りで掲載されたものです。ヤマシタさんのこういう傾向の作品は今まで読んだことはなかったのですが、近未来SFとでもいう形になっています。

近未来、というか23世紀。中世の時代に魔女が呪いをかけたように、未来のある時代、生まれた子どもに呪いをかける、と言うことが流行り始め、でもインフルエンザの流行でこの呪い(スペル)をかける呪人種(スペロイド)が不足し、国際機関に保護=監禁されるようになったのです。そして2140年にすべての子どもの出生児に呪いをかける出生時呪印制度が導入され、出生届提出のときに「16歳のときにナントカカントカ」と言う呪いを必ずかけられるようになった、という設定の世界です。

この世界では必ず人は呪いを持って生まれてきて、16歳でそれが発動し、それが大変であれば大変であるほどそれを克服することでビッグになる、ということになっているのです。

しかし、この作品の主人公・古賀差保子は、日本で唯一呪いがかからなかった人間なのです。これを担当する厚生労働省の呪者が何度かけても差保子にだけはかからなかった。そのことで、差保子は下らない差別や馬鹿馬鹿しいいじめの対象にもなっているのですが、それを同じクラスの杉本がかばおうとするのですけれども、差保子は「興味ない」と言い放つのでした。

一方、呪者の小佐田は毎日毎日はんこをつくことでひとりひとりの子どもたちに呪いをかけているのでした。

差保子が家に帰ると、ニュースでは呪印制度が出来る前に生まれた最後の日本人、つまり呪われていない最後の日本人が死んだことを伝えています。部屋に戻った差保子は思います。私がのろわれないで生まれたのには本当はきっと何か大事な意味があるはずだ、と。でももしなかったら、という不安からは逃れられないのですが。

しかし翌日異変が起こります。生徒や先生、多くの人が急に倒れ、首から木の芽のようなものが生えて茂みが出来てしまいます。そこに突然現れたヘリコプターで、差保子を連れて行こうとした人物は、厚生労働大臣の女性でした。

厚生労働大臣がいうには、厚労省下の呪者自身による内部テロによるものらしく、テロを図ったこの呪者との交渉が出来るのは、日本で唯一呪いがかけられていない差保子だけしかいない、ということになったのでした。

彼らは差保子だけを連れて行こうとしますが、杉本が俺も行くと言い張り、厚生労働大臣と交渉の結果、なぜか杉本も連れて行ってもらえることになります。

都庁の最上階で仕事をしている小佐田のもとにたどりついた一行は、周りに植物が生い茂ってしまうのに気がつきます。そして携帯越しに小佐田が厚労大臣と話すところを聞くと、この呪いは100日後に解ける、というのです。どういう状況で倒れても、100日後には必ず死なずに目を覚ますと。「100日の間深い深い眠りにつく」それだけの呪いだというのでした。しかし厚労大臣は、100日の間多くの人が眠ってしまったら、日本経済と世界情勢がいったいどうなると思うのか、と問いつめます。

しかし小佐田は、なぜこんなことをしたのかの理由はあとで話すが、「呪いのかかっていない人」だけが僕と話すことが出来る、中によこしてくれ、というのでした。俺も行くという杉本。ダメだという厚労大臣。交渉を、と言いかけた大臣に小佐田は植物を操り、差保子と杉本だけを自らの元にたどりつかせたのでした。

その道の途中で杉本は差保子にいいます。呪いとは、昔は悪い言葉だったんだ、と。だから差保子が呪われてないのも、別に悪いことじゃないのかもよ、と。差保子はいいます。もし自分に呪いがないことに意味がないっていわれたらどうしようと思うと。すごく悪いことが起きちゃえばいいのにと思ってしまう、と。杉本は「もう十分悪いよ」と言いながら先を急ぎます。

二人が最上階にたどりつくと、そこには小佐田がいました。その映像が厚生労働大臣たちに写されるカメラの前で、小佐田は自分のことを話し始めます。正確にいえば、自分の一族のこと。彼らは、出生時呪印制度が出来てから120年間、この都庁の塔に閉じ込められていたというのです。初代が高い志を持って仕事を始めてから20年、次に息子が後を継ぎ、そこに連れて来られたポーランド人の呪人種と結婚し、3代目はそのハーフの娘。ひときわ呪力が強く、また就任前にどこかで作ってきた子どもの父親も誰か決していわなかったのだという。彼が今日行っている計画も、彼女が始めたのではないかということなのでした。

そして彼の父が次ぎ、父が亡くなって自分が次いだ。16歳の時からこの仕事を始め、生まれてから一度も湖を見たこともなく、海のにおいを嗅いだこともない。木々が群れをなして風に揺れる音も聞いたことがない、というのです。

僕は、自分が塔の上のお姫さまなのか悪い魔女なのかは分からない。でも初めて呪印に触れた瞬間、「あまねく呪われよ」という言葉が聞こえたのだというのです。

その言葉を聞くと、大臣も杉本にも、首に木の芽が生えてたおれそうになります。差保子はいいます。呪うって言葉は、昔は悪い意味だったって、と。そう、「何かとても悪いことが起こればいいのに」という意味だと。それから逃げることは出来ない、と小佐田はいいます。でもきみだけは違う、きみだけが何度印を押しても真っ白な紙のままだったのだ、と。

差保子は、「あたしが生まれてきたことに意味がありますか?」と問います。すると小佐田は、「分からない。でもきみは、僕に取って唯一憎まなくてもよい存在なのだ」というのでした。

大臣が小佐田に話しかけます。いったいどうするつもりなのかと。小佐田は答えます。この計画は呪印が出来る前に生まれた人がみな死んだら動き出す仕組みでそれがたまたま今日だったのだと。

小佐田は大臣に問います。「あなたは自分の背負った呪いをいいものだったと思う?」と。大臣はこの呪いを乗り越える間に、家族を失ったのでした。「呪いの試練を克服するのに犠牲にしたものと、その後得られた人生は犠牲に見合うものだった?」と問う小佐田に、「あれは自分だけに与えられた意味のある試練だった」という大臣。小佐田は、「あとから貼付けた意味なんか無意味だ」と言います。ここは、確かに二階に上がって梯子を外されたような感じがしますね。大臣は叫びます。「私たちの苦しみから意味を奪わないで!」と。

小佐田はいいます。僕はどこか呪いのないところへ行く。君は僕と一緒に来るか、それともきみ以外がみな眠っているのを100日待つか、と尋ねます。杉本から手を離して差保子は尋ねます。「あなたといれば私に意味はある?」と。

そのとき杉本はいいます。無視されたり嫌がらせされたりしても毅然としている差保子のことが、杉本はずっと好きだったのだと。そして小佐田にいいます。どこに行ってもいいから差保子に悪いことだけはさせないで、ずっと笑っていられるようにしてくれ、と。

差保子はいいます。「なんで、あたしきみになにもしてないのに」と。なにも、とか意味とか、そんなの何も、ない、と言う杉本。杉本はつまりただ単に差保子のことが好きだからここについてきて、好きだから幸せになってほしくてここで手を離したんだということに、差保子は気づきます。

君の呪いは何、と尋ねる小佐田。杉本は答えます。「初恋の人の、呪いを解く」と。

杉本の涙がこぼれた瞬間、電気のようなものが走り、爆発します。差保子に駆け寄る杉本。差保子が杉本の首筋に触ると、木の芽は消えていました。差保子はいいます。「よかった、100日も待たなくて済んだ」と。

立ち上がった小佐田はいいます。「真実の愛。世界で唯一の呪いの特効薬だ。きみはすべての人の生来の呪いも消してしまったのだ」と。きみは世界中の呪いを消すことで、彼女の呪いを解いたんだ。真実の愛の力は伝説なんだと思っていた。羨ましいよ。と。小佐田は去ろうとします。そして去り際に差保子にいいます。

「大丈夫。生命に意味なんてないよ。」と。そして風に乗って、都庁の窓からどこかへ飛んでいってしまうのでした。

「俺、歴史の教科書載るかな」という杉本。「載るかもね」という差保子。「怒られんのかな?大臣さんとかに」とか言ってます。

一方小佐田はどこか遠い南の海の海岸にたち、「くさくてからい」と独り言を言っているのでした。

このマンガはいろいろ解釈が出来ますね。例えば、「運命」とか「占い」とか「呪い」を気にする人たちに、そんなものに意味はないよ、と言っているようにも読めますし、また自分の変えられない何かについて考え込んでいる人たちに、大丈夫、と言っているようにも読めます。

真実の愛こそが世界の呪いを解く、というのはベタな展開ですが、要するにこれは白雪姫とかそういうおとぎ話、魔女の呪い系のお話のある意味でのパロディだともいえるし、敢えてベタな展開にすることでウソの中に本気(マジ)を混ぜてるのかな、とも思います。

生命に意味なんてない。まあそうだなと思います。意味があるのは、生きているからで、意味がいのちのためにあるわけですから。使命とは、いのちを燃焼させるためにあるのだと思います。そのいのちが力を持っていればいるだけ、大きなことをしなければいのちを燃焼させきれない、ただそれだけのことなんだろうと思います。またいのちの個性みたいなものもあるから、それにあわせた使命を見繕う必要はあるんだろうと思います。

ある意味、意味にとらわれがちな現代人に、もっと自然体で行こうよ、というふうに言っていると取ることも出来ます。作者のいいたいことはその全部かもしれないし、全部はずれかもしれない。でもそれは、どちらでもいいのではないかとも思います。

この、「自らが呪われないことを呪う少女」と、「呪いをかけるという自らに課せられた呪いを憎む男」という組み合わせは面白いと思いますし、「初恋の人の呪いを解くという呪いを課せられた少年」という思いがけない王子様の存在も可笑しいなと思います。

そして真実の愛が世界を救って3人はそれぞれの呪いから解放され、少年の愛だけが残る。まあなんてキレイな構図なんだろうかと思います。

でもわずか100ページの間にこれだけのストーリーが展開し、「生に意味を求める浅ましい人間たち」を呪う「人の生に意味を与えるために自らの生を犠牲にすることを強いられた憎悪」というものの両方が無意味化される、というのはなんというかすごく面白いなと思います。

この辺考えだしたらきりがなくなりそうなテーマではありますが、まあそんな具合に読み解いてみたところで、今日のところは終わりにしようと思います。ヤマシタさんのこの作品は8月22日に発売される『運命の女の子』に他の二編と同時に収録されるそうです。楽しみにしたいと思います。

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