個人的な感想です。

マンガ・アニメの感想を書いていきます。『進撃の巨人』『ぼくらのへんたい』『ランドリオール』など。

週刊漫画Timesで石井さだよしさんの『解体屋ゲン』第596話「新しい風(後編)」を読みました!

週刊漫画Timesで石井さだよしさんの『解体屋ゲン』第596話「新しい風(後編)」を読みました!

建設や土木に関する知識、特に業界特有の事情などについてはいろいろと表に出て来ないことがあるわけですが、この『解体屋ゲン』の魅力の一つはそういうことが分かりやすく説明されていることだと思います。特に日本では公共工事はゼネコンが中心の、「設計・施工発注方式」、つまり「ゼネコン丸投げ」方式で行われていて、それだとゼネコンは一括発注によりどんぶり勘定にできるのでそこで利益を取れる、ということになるわけですね。

今回の主人公・ジョージ富田はゲンのライバルなのですが、東日本大震災からの復興に一肌脱ぎたいと復興事業に参入したもののそうした日本の慣行の壁に阻まれ、なかなか思うようにやれずにいます。

現在、予算はあるのに復興工事がなかなか進まないのは復興工事が入札不調になる例が多くある、ということもあるわけですが、富田は設計・施工発注方式でなくコンストラクション・マネジメント方式(CM方式)で工事を取ることで予算をカットし、復興工事を進めることが可能だ、と考えます。CM方式では基本計画・発注方式・工程管理・コスト管理など事業全体をコンストラクション・マネジメント・リーダー(CMR)が行う、「欧米ではごく普通のスタイル」で、富田は自分がCMRになって今入札に出ている「第5次防潮堤嵩上げ工事」を取り、自分の世界各地でのCMRとしての経験を生かしてコストを3割カットし、工事を実行したいと考えます。

しかし、工事の入札の工事から申し込みの締め切りがわずか15日だということを知って富田は驚きます。そしてパートナーとしてあてがわれたゼネコンの男がぬらりくらりと非協力的なのを見て、富田ははっとします。「おそらく行政とゼネコンは裏で手を組んでいるのだ」と。そして「工事期間を短く設定し、新規参入を阻み、特定の業者に情報をリークしている可能性もある。談合や賄賂のような分かりやすい図式はなくなっているけれども、こういうことこそが日本建設業界の問題の根の深さなのではないか」と思ったわけです。

そう考えていた富田のところにゲンがやって来て、心配して様子を見に来た、と言うゲンに富田は強がりますが、ゲンは「一人でできることなどたかが知れてる。だから志を同じくする仲間が現れたら素直にそいつにのってみろ」とだけ言って去るのでした。

今回の話はここからです。(前置きが長くなりましたが、この前置きがないと今回の話が分からないんですよね)

復興工事の行われている東北に来た富田。「私はこの日本という国を信じている」と思いながら、「ここに来て私の日本観は揺らいでいる」とも思います。田舎道を歩いていると傍若無人にスピードを上げてその横を通り過ぎて行く暴走ダンプ。ホテルへ行くとホテルのランドリーが故障していることに怒りフロントに怒りをぶつける建設作業員たち。それらを外国人である富田は冷静に見つめているのです。

ゼネコンとの打ち合わせに行くと、握手しようとするとスルーされるというような幼稚な嫌がらせ。彼が取れた事業は結局ゼネコンとの共同事業とは名ばかりの第三次下請けで、最近は蚊帳の外におかれています。

富田は思います。外国人である自分から見れば日本の復興事業は疑問だらけだ、と。大きな断層が跳ね上がったばかりなのだから、そのような巨大地震を想定して巨大な防潮堤をつくるより、避難道路を造る方が先なのではないか、とか、復興工事をゼネコンに丸投げしたら金は地元に落ちずに東京に還流するだけではないか、とか。原発の是非を含め、大震災を機に日本のあり方を考え直す機会が与えられたはずだと思う富田は、このゼネコンとその傘下の会合では横暴に上下関係をちらつかせる輩ばかりが目につき、「その結論が今の有様だというのか」と思います。

それでも復興を見届けるまではここにいると誓ったのだ、と思う富田でしたが、ゼネコンの関心は自らのJVが入札で負けてしまったことだけで、今日はその対応に対する会議だったわけです。しかも富田には資料はありません。そのまえの「懇親会」で配られていたわけです。中には資料を床に投げ、「欲しかったら這いつくばって取りにこい」とまでいうものもいて、富田はついに彼に向かって行き、彼の胸元をつかむのでした。

そこに現れたのが二機建設の二人。二機建設に関しては594話の感想を書いたときに取り上げています。

二人は会合は明日ではないかという司会に対し、今日関係者が集まっているというのを聞いて裏でおかしな対抗策をつくられたら敵わないから今日来た、というのです。彼らは一方的に喋ります。

「第五次工事は自分たちが落札した。だからこの場で水平協業で仕事をしてくれるパートナーを募集する。条件は、本社に伺いを立てずこの場で決定できる裁量権を持っていること、元請け下請け区別なく同一の仕事には同一の賃金を支払うこと、それに賛同できる企業だけこの場に残ってください」と。

ゼネコン側は怒って「お前らなんか認めない」と言いますが、二機の二人は「残念です、また次回よろしくお願いします」とけろりとし、ゼネコンや下請けたちはその場からぞろぞろと退席したのでした。

もちろん二機建設の二人のいうことは、慣行など考えず普通に考えれば当たり前のことだと思うのですが、日本の現状では理想論ですよね。しかし二人はそのようにして建設業界を変えたい、と思って今までいろいろ手を打ってきたのでした。残った企業は二社のみ。潜水土木専門の沢田という男と富田の二人です。自己紹介する富田に、二機建設の新井はゲンさんから話を聞いている、と言います。

実は今回の入札を進めてくれたのもゲンで、ゼネコンのやり方に不満を持っている連中も多い、特に富田とはきっと馬が合う、と進めてくれたのでした。

新井は富田に、今回はCM方式で工事をするので、CMRを富田にお願いしたい、と言います。まさにそれは、富田の望んでいたことでした。

窓を開けて新しい風を入れ、「これから建設業界の話をしましょうか」という富田。富田は「風向きが変わった?」と思います。

おそらく、新井の情熱的な話を聞かされ、すっかり元気になったのでしょう。翌朝夜明けの海を見つめる富田は、自信に満ちた表情で、「私はこの日本という国を、そして日本人を信じている…」と思うのでした。

結局ここで指摘されている現在の建設業界の問題は、官民癒着によりゼネコンに工事を丸投げすることにより利益を得ている人々がいると言うこと。そして、自分で自分の仕事をコントロールしようという人は少数派で、「親方日の丸」意識に基づき、ゼネコンの傘下でその利益のおこぼれに預かろうとする人が現状維持を望んでいる、というようなことなのだと思います。

こういう「パトロン・クライアント関係」みたいなものはヨーロッパの歴史を勉強していると18世紀頃の話としてよく出て来るのですが、まあ民主的な関係とは言いにくいところがありますよね。巨大企業が業界を牛耳る態勢が若くてやる気のある新興勢力の邪魔をしている、という主張なわけです。現在はむしろ国際競争に勝つためには大企業が頑張らないといけないんだ、と言うような論理がよく声高に主張されています。業界関係者でない私には、本当はどうなのかはもちろん分からないところが多いわけですが、もちろんどちらの主張も理解はできます。

しかしおそらく海外の現場では、政府の役人自体が多額のキックバックを求めて来るような体質の国ならばともかく、CM方式のような透明性の高いやり方を求めて来る例が多くなるのではないかとも思います。政治力を使って政府に食い込んで仕事を取ると言うやり方だけでなく、地道にコスト計算をしてコストを下げるやり方もできないと、海外での事業でも苦しくなるところはあるのではないかなと思います。大体政治力や金の力で食い込むようなやり方では、現在では、あるいはこれからは中国に対抗するのは難しくなって来ると思いますしね。

なかなか難しいことも多いとは思いますが、建設業界も良い方向に動いてくれるといいなあと思いました。

今週も面白かったです!
スポンサーサイト

*Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

Menu

プロフィール

kous377

Author:kous377
FC2ブログへようこそ!

最新記事

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR