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さいとうちほさんの『とりかえ・ばや』第5巻を読みました!(3)美しい花の宴の場面が印象的でした!


とりかえ・ばや 5 (フラワーコミックスアルファ)とりかえ・ばや 5 (フラワーコミックスアルファ)
(2014/09/10)
さいとう ちほ

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さいとうちほさんの『とりかえ・ばや』第5巻を読みました!(3)

第5巻は沙羅睡蓮の二人ともが本来の、というか生物学的な性に目覚め、自分の望む性で生きてきた、その限界が見えて来る巻なわけですが、沙羅の方の物語のクライマックスが23話「花の宴」になるわけですね。そして睡蓮の物語に橋渡しをされる。この自然な展開も上手いなあと思うのでした。

扉を開けると、「今日は、私が散る日——」。男として生きてきた沙羅が男として生きるのをやめるわけですから、人生のほとんどすべてを投げ出して、子供を産むと言う選択肢を選ぶわけですね。その時、沙羅に何が残っているのか。それはこれから描かれることですが、人が全く違った人間として生きるということは果たして可能なのか、という話になるのではないかと思います。

しかし子供を産むということは、自分の中に眠っていた何かが目覚めたということでもあるわけで、その目覚めにどう対処して行くのか、どういう覚悟を持っているのかなども、これから描かれて行くのだろうなと思います。

それはともかく、宮中の花の宴の当日。沙羅は今までにもまして多くの人に語りかけ、談笑しています。しかしおなかも自分の意識としてはだいぶ大きくなってきているように感じられ、くたびれます。付き添わせているのは乳母のあぐりの子、土良光と土良子。乳兄弟、乳母子(めのとご)ということになります。二人は沙羅の事情をすべて理解して介助しているわけですが、この宴のあと、京を抜け出して人目のつかぬ里へ向かう手はずも任せているのでした。頭を下げる沙羅に二人は顔を見合わせます。

再び人々の中に戻る沙羅双樹の中納言。そこに近寄ってきたのは男色家の式部卿宮。石蕗の中将を手引きして沙羅に対する石蕗の思いを遂げさせた人です。(とはいえ彼のつもりとしては男色家の仲間を増やそうという意図だったわけですが)式部卿宮が「以前とは打って変わってずいぶん念入りに声をかけられる」というと、沙羅は「今日の私には皆様の顔が懐かしく言葉を交わすのが嬉しいのです」と答えます。式部卿宮は「私など呪いをかけたい顔ばかり」と混ぜっ返しますが沙羅は自らの防鴨河使長官の引き継ぎの件を話します。すると、宮は通りかかった石蕗を指し、自ら強く名乗り出ているご仁もいる、と言います。

石蕗に本気なのか、と尋ねる沙羅。石蕗は「本気で、お前の役に立つのが望みだ」と意味深な返事をするのでした。

そんな沙羅に声をかけたのは、睡蓮尚侍でした。睡蓮は沙羅と一緒に育ち、男なのに女装して女東宮に仕える尚侍になっています。沙羅は睡蓮にも、「いつもより念入りに装っていて美しいね。桜色の重ねが神秘的だ」といつになく本気で褒めています。そんな沙羅に、睡蓮も何か変だと思うのですが、そこにちょうど東宮と二人の父、関白左大臣がやってきたのでした。

女東宮の前に伺候する二人を見て東宮は「雛人形じゃ。世にも美しい光景じゃの、関白左大臣」と言います。思わず涙ぐむ父を見て、沙羅もつい涙ぐんでしまい、女東宮に「関白家の男子は泣き虫なのだの」と言われてしまいます。そんな華やいだ風景をみつつ、右大臣家の娘・梅壷の女御はしらけた表情をします。

そこにが現れ、花の宴が始まりました。

博士(官学である漢学を教える役職)により出された字を使って漢詩を作る、という競演が始まります。沙羅に与えられた字は「春」でした。「春を引き止めようとしても春はとどまってはくれない、春は帰ってしまい人は孤独を噛み締める。花散らす風を嫌っても風は止まず、吹かれて散った花びらが物悲しい。君は丈をめぐらせた館で春の終わりを過ごされ、私は花に囲まれた小さな家で酔い、残り少ない春を送る」という意味の漢詩を詠むのでした。

は中納言を誉め称え、自らの衣を与えます。最高の栄誉ですね。沙羅は、の匂いのする衣に華やいだ気持ちになります。そしてお礼の拝舞をする沙羅を見て、父の関白左大臣は男として立派に育った娘に幸せな気持ちになるのでした。

はさらに、沙羅の笛を聞きたいと所望します。睡蓮と一緒に、と望むに、睡蓮の入内につながる(男ですからそれは困りますよね)ようにしないようにと、一人で横笛を吹くのでした。その音色に、また今日の沙羅の美しすぎる姿に、睡蓮は心の中がざわざわするのを感じるのでした。

その笛の音に、沙羅はすべての気持ちを込めます。父、母、妻の四の姫、いろいろあった石蕗、女東宮、梅壷、そして、睡蓮。すべての人々への惜別の情を込めて天まで届けとばかりに吹く笛の音は一同を感動させ、感情が桜吹雪のように押し寄せてきた睡蓮は涙を流します。そして帝は、「中納言を昇進させねばなるまい」と言います。帝が沙羅を「右大将」に任命する、というのを聞いた父の関白は、急ぎで沙羅を探させます。しかし沙羅はどこにもいませんでした。

十良光に導かれて暗いところに用意された牛車に向かう沙羅。しかしそこには、石蕗が待ち構えていました。計画が台無し、と思う沙羅でしたが、十良光は母のあぐりが石蕗の中将に協力を求めたことを打ち明けます。あぐりをせめてはならぬ、と言う石蕗に「ふざけるな」と拒む沙羅。しかし、おなかの子が石蕗を蹴ったのを感じた石蕗は沙羅に、「さすがおまえのややだ。母様に加勢しおった」と笑います。毒気をぬかれて大人しくなった沙羅は、石蕗に「どこへ行くのだ」と聞きます。「空いている父の別邸がある、宇治へ向かう」と石蕗は答えるのでした。

今回は本当に華やいだ場面の連続で、本当に物語のクライマックスだなと思います。そして姿を消した沙羅。5巻ではもう最後まで、沙羅はもう姿を見せません。次に姿を見せるときには、どのような姿でどこにいるのでしょうか。

見返しの作者からのメッセージで、「沙羅に一番近いのは宝塚の男役でしょうか。なので花の宴は、沙羅の引退公演のつもりで花吹雪で送り出してみました」と書いてあり、まさにそんな感じだなと思いました。

一つの物語が終わり、もう一つの物語が始まる。そんな感じがしたこの23話なのでした。
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