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さいとうちほさんの『とりかえ・ばや』第5巻を読みました!(4)沙羅の失踪と睡蓮の目覚め。


とりかえ・ばや 5 (フラワーコミックスアルファ)とりかえ・ばや 5 (フラワーコミックスアルファ)
(2014/09/10)
さいとう ちほ

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さいとうちほさんの『とりかえ・ばや』第5巻を読みました!(4)

続けて書いている『とりかえ・ばや』第5巻の感想。もともとのお話『とりかへばや物語』は12世紀後半、1180年以前に成立したと言いますから後白河法皇や平清盛の時代でしょうか。おそらく、宮中の栄華も源氏物語の時代のような、まだ自分の周辺に日常として感じられる時代ではなくて、もうすでに少し戯画化したものに感じられるようになった時代なのではないかと思います。左大臣や右大臣の兄弟や、陰謀を企む梅壷の女御、皇位継承から追われて吉野に隠棲している吉野の君など、前の時代に書かれたさまざまな作品の本歌取り、ある種のパロディのように感じられるところもありますので。

もちろん、もともと男と女が入れ替わって女が男として宮中に出仕して出世するとか、女が女東宮に仕えて尚侍になるとか、設定自体が荒唐無稽でもありますし、そういう意味で古典的な話というよりもバロック的な、すでに何かが崩れた美しさを持った話でもあると思います。

その中でさいとうちほさんのマンガの描写はどれも少女マンガの王道という感じで美しく、それぞれのキャラクターもなるほどと思うような描写で、真正面から取り組むことでこのお話の面白さを現代に分かりやすく何倍にもしてマンガ化しているように感じられます。

さて、今回は第24話、「霧の迷い」について書きたいと思います。

23話で華やかな花の宴を最後に忽然と姿を消してしまった沙羅双樹はその秀でた振る舞いを賞賛し、右大将の官を与えたのですが、肝心の沙羅の姿がどこにもありません。

24話冒頭は、都や宮中で沙羅の失踪が噂されている場面です。父の関白左大臣も舅の右大臣も手を尽くして探しても見つからず、また親友の石蕗の宰相の中将は「心配だ」とだけ言っています。もちろん石蕗が隠したのですから言うはずもないのですが。そして心配しているのは沙羅の妻である右大臣の娘、四の姫四の姫石蕗と密通して子供を産み、また二人目を妊娠しています。沙羅の失踪が自らの不義を嘆いてのことか、と心配でたまりません。上の子・雪姫は、大きくなるに連れて石蕗にそっくりになって行きます。

に召し出された関白右大臣。自分がこの世の栄華に浮かれた罰に、神隠しにあったかと嘆く関白。右大将自らが姿を消した可能性はないのか、悩みがあったのかと問うに、「あの子の悩み多き人生は私の不徳の致すところ」と泣き崩れる関白。「私にも右大将自身にも、人の手ではとても解けぬ鎖でございます」というのでした。は、関白の背後に沙羅の幻の姿を見ます。失ったものの大きさに、も憂いを感じます。

そしてもう一人、沙羅の失踪を深く嘆いているのが睡蓮でした。何があったのか、どうして行ってしまったのか、そしてなぜ黙って行ってしまったのか。嘆きつつ仮寝しているところに、吉野の君からの便りが届きます。きっと吉野の君のところにいる、と思った睡蓮でしたが、返事は「事情は知らぬが、今に元気な便りがあることを信じて待たれよ」というもので、がっかりします。これ以上どうしたらいいのか、男の身なら探しに行くのに。と思った睡蓮は、はっと自分が男であることを思い出すのでした。

女東宮の御前に出てもぼうっとしている睡蓮。声をかけられて、女東宮の父・朱雀院の病気平癒の参詣の供に加えられたことを知ります。女東宮は優しく、「兄君の無事を祈りに参るがよい」というのでした。

山道を神社に向かう女東宮の一行。しかし雨が降ってきて、輿を担ぐ者が足を滑らせ、輿は落下してしまいますが、女東宮は危うく睡蓮が抱えてことなきを得ました。結局そのまま、睡蓮が女東宮をおぶったまま道を急ぐことになります。睡蓮は、女東宮の重みや息づかい、しがみつく手まで心地よく、極楽の雲の中を飛んでいるようだと思います。

しかしあろうことか、女官たちは警護の武官たちとはぐれてしまいます。そこで神が宿りそうな巨木の根元につくられた小さな社に女東宮と睡蓮の尚侍を残して、手分けしてあたりを探りに行きます。二人きりになった東宮と睡蓮。足を押さえる東宮に睡蓮が心配すると、「腫れてはおらぬか」と足を見せる女東宮。視線のやり場に困る睡蓮。「触ってみよ」と手を取られ、足に触らされて睡蓮は、もう上気して自分がどうなっているのか分かりません。「あまりに私の手が熱うて、東宮さまの足と一つになって分かりません…」と動転したことを言う睡蓮に、東宮は「尚侍、ふるえておるではないか…」と驚きます。

巨大な神木のカット。

見開きの、二人きりの空間で女東宮のあらわになったすねに手を当てる睡蓮のカット。

「なぜ…」と声をかけ、睡蓮の表情を見て「何か」の気持ちが芽生える女東宮。

次の瞬間、「もう治った」ともぞもぞし、衣を直し座り直す女東宮。そこに、「東宮さま、輿が参りました!」と声がかかります。

「この古木は、古より縁結びと失せものの神と崇められておりましての」という武官。東宮さま、と睡蓮が手を出してもすっと通り過ぎ、輿に乗ってしまった女東宮。表情は、頬を赤らめています。

睡蓮は、もう一度神木を見上げて、「縁結びと失せものの神」と繰り返すのでした。

ここで、睡蓮は自分の恋慕の情を女東宮に見破られたのではないかと恐れ、また女東宮は睡蓮に何かの思いを持つようになるわけで、まさに「縁結び」現象?が起こっているわけですね。

そして、失せものと言えば——もちろん沙羅のことです。

どこかできっと、この神木は伏線となってまた現れて来るのではないかと思います。

さて、宮中。梅壷の女御の部屋へ来た父の右大臣。しらけている梅壷の前で沙羅の失踪をぎゃあぎゃあとわめくと、梅壷は四の姫に子供が二人もいるのに、と言われて(自分はまだ子が生まれていないことをさんざん言われています)むっとして、「雪姫は沙羅双樹の種ではないという噂がある」、という話をします。ぎょっとして出て行く右大臣に、梅壷は「ああ面白い」といって高笑いするのでした。

屋敷に戻った右大臣は、雪姫を抱き上げます。確かに沙羅双樹には似ていない。では誰に、と思った右大臣は、その顔を見てピンと来ます。右大臣の脳裏に浮かんだのは、以前四の姫に言い寄っていた石蕗の顔でした。

今まで隠していたこと、隠しきれなくなったこと。睡蓮に起こった心の変化。これから物語がどうなって行くのか。否が応にも、物語は動いて行きます。睡蓮が何を思い、どのように行動を起こして行くのか、その辺りが楽しみですね。
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