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週刊漫画Timesで芳家圭三さんの『寺おとこ』第7話を読みました!声明の揺りのこと、仏縁のこと。

週刊漫画Timesで芳家圭三さんの『寺おとこ』第7話を読みました!

芳家圭三さんと言えば同じく週刊漫画Timesで連載されていた『壊れた仏像直しマス。』を思い出します。この作品は私も全巻持っていて、好きな作品なのですが、この連載が終わってから芳家さんは週刊漫画Timesで仏教の「声明(しょうみょう)」を学ぶ青年を主人公にした『寺おとこ』という作品を描いています。

仏像修復というのは仏教に関することの中でも興味を持たれやすいことだと思いますが、声明というのはどうなのでしょう、あまり馴染みが少ないのではないかとは思うのですが、私は以前芝居をやっていたこともあり、こういう発声系のことは割合興味があります。とは言っても、自分で習いに行くというところまでは積極的でもないのですが、このようにマンガになっていたりすると興味深く読んだりはします。

というわけで、わたし的には面白いのですが、一般的にはどうなんでしょうかね。連載もかなりとびとびで、忘れた頃に思い出したように掲載されているという感じなのですが、それでもさすがに「声明」をテーマにしたマンガはそんなにはないと思いますので(唯一かもしれません)、一部の方には支持されているんだろうなと思います。

声明」とは「仏教の声楽」という言い方をされることがありますが、ヨーロッパ音楽の声楽とはかなり根本的に違います。私たち現代の日本人は、音楽と言えば学校で学ぶ西洋音楽にしかなじみのないのが現状ですので、伝統的な邦楽というものは取っ付きにくいですね。また声明や読経を聞く機会も葬儀や法事などでしかなく、何かの伴奏のように聞き飛ばしていることが多いのではないかと思います。

でも聞いていると上手い人は上手いしあまり上手くない人は上手くない。やはり何か基本というものがあって、それができているかどうかということは大きいんだろうな、と素人ながら想像したりするわけです。

声明はその後の日本の邦楽、語り物などに大きな影響を与えていると言われていますが、わたしは実際に習ったこともなく、お坊さんに「どういう練習をするのですか」と聞いたら「多くの僧たちと一緒に修行していて、その修行全体の中で自然にできるようになった」という答えを聞いたことしかないので、良くわからないところがほとんどなのですが、このマンガでは一つ一つのことがテーマに取り上げられていて、面白いなと思います。

そんなわけで、いままで「声明」に興味がなかった方も、興味を持つ菊花になる作品なんじゃないかな、と思うのです。

今回はその中で、「揺り」と言われる声明の調子のつけ方が一つのテーマになっています。声明でもヨーロッパの「歌」と同じように音の高低があるわけですけれども、西欧音楽の音の高低の付け方とは根本的に違うようです。

主人公の鶴野は師匠の住職の前に座って声明の練習をしていますが、何度やっても「違う。まだ”歌”になってるね」と言われてしまいます。

「声明の”揺り”とはその字の通り音を”揺る”んだ。歌うんじゃない。」と言って見本を示してくれるのですが、何度やっても「もう一度」と言われてしまうのでした。

はっと目を覚ますと寝苦しい夏の夜。伸び悩んでいて夢にうなされてしまいますが、「歌になってるってどういうことなんだろ」とどうも良くわかりません。扇風機をつけようとしたら、壊れて動かなくなってしまっていました。結局鶴野は暑さのあまりよく眠れない夜を過ごしたのでした。

翌日、輪袈裟をかけて住職の娘・千尋と会話をする鶴野は、「エアコンのある居間で寝ればよかったのに」と言われて「勝手に師の仏間で寝るなんてできないよ」と言いますが、千尋は「ホンとくだらないトコだけ妙な遠慮するんだから」と呆れています。

檀家の人たちが話しているのを聞くでもなく聞いていると、檀家の杉枝さんの息子の聡太が野球チームのエースになったとのこと。でも何となく杉枝さんの表情が優れません。さらに聞くと、一緒に暮らしている甥の和輝もピッチャーでもともとエースだったのが、怪我をして投げられなくなっていて、それを気にしているのだと言うことが分かりました。

鶴野は自転車で橋の下に出かけ、そこで声明を練習しようとしたのですが、そこでは和輝が壁を相手にピッチングの練習をしていました。それを見た鶴野に、和輝は、「僕の方の怪我が治ったことを内緒にして!」とせがむのでした。

お寺に帰って考え込んでいる鶴野に、千尋は古い扇風機を出してきて置きますが、まだ考え込んでいる鶴野に、住職は「何か考え事でもあるみたいだが」と聞くと、鶴野は「いえ別に俺」と言葉を濁します。

住職は「確かに遠慮というのは礼節としてとても大切にすべきことだ。だがその為にせっかく仏様が結んで下さったご縁までを自ら手放すことになってはいけない」と言います。「鶴野くんがこうしてこの寺に来たのも仏様が結んで下さった大切なご縁の一つだ。そうしてつながったご縁一つ一つと真摯に向き合い、自分の元に手繰り寄せることで人はそのご縁をより良い縁へと変えて行くんだよ。決してつまらない遠慮でせっかくのご縁を粗末にしてはいけない」と言います。

それを聞いて鶴野は「つまらない遠慮か…やっぱりそうだよな。ありがとうございます。実は今日」と打ち明けます。

こういう話、ときどき聞くといいですね。心が洗われるような気がします。普段そう言うことを考えてるわけではありませんが、そういう「仏さま目線」の話もときどき聞くと、自分たち人間がつまらないことでくよくよしているのもつまらないことだなあと思えてきます。以前はよくこういう話も聞いていたのですが、最近社会の中でそう言うことを言う人が減りましたね。そう言う意味でもこういうマンガはなかなか意味があるんじゃないかという気がします。

翌日でしょうか、和輝のピッチングの相手をする鶴野。二人のところに千尋に連れられて杉枝がやってきます。「どうしてこんな嘘をついたの!」という杉枝に、鶴野は「和輝さんは杉枝さんのご家族に遠慮したんですよ。」と言います。「ただ、その遠慮のしかたを少し間違えてしまった」と。

和輝は、自分の両親が死んで杉枝に引き取ってもらった時、いやな顔一つしないで引き取ってもらい、ずっと迷惑をかけっぱなしだったから、家族の役に立ちたかった、というのです。偶然怪我をしたから、それで聡太がエースになって試合をまかされておじさんもおばさんも大喜びをしてたから、怪我が治っても治らないフリをしてエースで居られれば、「恩返しができる」と思った、というのです。杉枝はそれを聞いて、和輝の頬を打ちます。

「それのどこが恩返しなの!カズくんは大事なことを忘れてる。あなたのなくなったお母さんはおばさんの大切な妹なの。カズくんは大切な妹の子供なのよ。カズくんがいつもそばに居てくれるから、おばさんもあの日の、二年前の寂しさを忘れていられるんじゃない。それを迷惑だなんて、あんまりだわ」と泣く杉枝。和輝もそれを聞いて、ごめんなさい、と謝るのでした。

夜。住職と会話する千尋。「遠慮のし過ぎも考えものよね」という千尋に、住職は「これで本当の家族になれるだろう」と答えます。「久しぶりにお母さんのこと思い出した」という千尋は、もし鶴野が将来養子縁組して後を継いだら、「あの糸切れ凧男」をどう思うんだろう、と言います。

一方鶴野。部屋で声明の練習をしていますが、古い扇風機のうなり声がうるさく、気が散ってしまいます。風量がおかしくて、ずっと音が揺れてる、と独り言を言って、ついに理解したのでした。

「風量で音が揺れる」

これが「揺り」なのだと。

翌日の練習会で、住職の前で鶴野が声を出すのを聞いた住職は「大丈夫だね」と言います。一緒に練習をしている、一方、ずっと「声楽」を練習してきた御木本は、「まだ歌になっています。もう一度」と言われています。

「西洋音楽のビブラートとはまた違うみたいだが、私には何のことだかさっぱりだ」という御木本。鶴野は「呼吸の強弱ですよ。」と答えます。「喉じゃなく吐く息の量で声を揺するんです。歌の声より楽器の音の感覚と言うか」と説明する鶴野ですが、御木本は全然ピンと来ません。「やれやれ。音の世界というのは何とも奥深い」という御木本でした。

千尋はそれを見ながら、「扇風機で音の動きに気づくなんて、普段はぼけっと流されててもどこか鋭いところがあるのかしら」と住職に言うと、住職は「そうさなあ。ひとつ言えるとしたら、きっと母さんは鶴野君のことを気に入ったんじゃないか」と答えるのでした。

こうしてあらすじを見てきてみると、声明の話、特に「揺り」の話あり、仏縁の話あり、「間違った遠慮」の話ありと、シンプルに見えて実は盛りだくさんな話なのだなと思います。

わたしが特に関心を持ったのはもちろん「揺り」とは何かということなのですが、それが「呼吸の強弱」なのだ、と言われても難しいですよね。(笑)でも実際に扇風機をつけてみると、その立てるうなり声は「弱」の時は低く、「強」の時は高くなりますね。つまり、息の吐き始め、声の出し始めは弱いから低く、より強く吐くとより高い音になる、ということなのかもしれません。楽器、特に和楽器系の笛も、強く吹くと高い音になる、ということはありますね。何かそんな感じなのかな、と思いました。

まあそんなふうにYouTubeの「高野山の僧侶たちによる声明」なんてものを聞いたりしながら少し真似をしてみたりしたわけですが、なかなか奥の深い世界なんだなと思ったのでした。
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