個人的な感想です。

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「浦沢直樹の漫勉」を見ました!(2)山下和美さんの制作風景が圧巻でした!


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(2014/06/25)
山下 和美

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「浦沢直樹の漫勉」を見ました!(2)山下和美さんの制作風景が圧巻でした!

「浦沢直樹の漫勉」はマンガ家さんたちの絵の書き方を映像で記録に残そうという企画なわけですが、今回取り上げられたのは言い出しっぺの浦沢さんとかわぐちかいじさん、そして山下和美さんの3人でした。

感想(1)では浦沢さんとかわぐちさんの映像について書いたのですが全部は少し書ききれない感じがありました。今回は、その続きで山下さんの制作風景について感想を書きたいと思います。

山下和美さんは現在「モーニング」で「ランド」を連載中。四方を巨大な四人の「神」によって囲まれ、そこから出ることができない村で暮らしている少女・杏が主人公。杏はどうにかして「外」へ出て行きたいのですが、外に出ることができるらしい不思議な子供たちを発見し、その秘密を知ろうとする、というストーリーです。

山下さんの絵はご本人もおっしゃっていますが基本的に80年代の少女マンガだと思います。そのタッチで青年マンガを描く、という人は今では多いのですが、その方向性を切り開いたお一人が山下さんだと思います。

少女マンガ的なタッチなので、基本的に丸ペンを使われて細い繊細な線が多いのですが、見ていてとても興味深い。この線を引くときに、こういう方向に引くのかとか、太い線を引く時の力の入れ方とか、そういうことまで興味深く見てしまいます。(私がマンガの絵を練習中だということもあるのですが…・笑)

前回書いたように山下さんは数寄屋造りのお宅を建ててそこで仕事もなさっていて、仕事部屋に神棚があったりやはりこういう家に住んだからこそ「ランド」のような日本的な不思議なお話が発想されたのかもなあ、と思ったりしました。

山下さんの撮影は三日間に渡ったそうで、浦沢さんと二人でその映像を見ながら会話をしている、その会話がやはり、かわぐちさんのときもそうでしたが、同業者ならではの深い話があって、興味深かったです。

山下さんの原稿、下書きの書き方で印象的なのは、すべてフリーハンドであること。浦沢さん、かわぐちさんは先に枠線を定規で引いてから描き始めていましたが、山下さんは枠線もフリーハンドで(固定しないという意味合いが強いのかな)、頭の中の線をそのまま描いているという天才的な描き方だなと思いました。浦沢さんもかわぐちさんもどちらかと言うと「手」と「目」と「頭」が相談しながら(自分の中の主観性と数字的なバランス感覚の客観性の両立)描いてると言う感じなのですが、山下さんはもっと「頭」主導、「カン」主導で描いているように見えました。浦沢さんはそれを「線のイメージを探している」と表現し、なるほど、と思いました。

下書きでは凄く悩む、と山下さんが言うと、浦沢さんも動きのある線、動きのあるデッサンは大変なんですけど、この持って行き方は凄いですよね、と感心します。資料写真とかは見ることもあるけれども、自分で想像して描くことが多い、と。浦沢さんも、資料写真をそのまま描くとこじんまりしてしまう、見ないで描く、というのがマンガらしい感じがする、バッという感じの動きというのは、写真では撮れない、とうなづいています。

絵を端から描いて行く(つまりアタリとか量感の把握より先に頭の中にあるイメージをそのまま絵にして行くという感じ)がすごいと思うのですが、イメージが消えないうちに絵にしてしまう、という描き方、つまり「客観的な「おかしくない」絵」ではなく主観的なものままをとにかく絵にする、イメージが消えないうちに描かないと消えてしまうという焦り、があるから、というのは私も凄く良くわかります。私が文章を書いていてもそうですし、絵ならなおさらです。そのためには、頭の中のイメージをそのまま絵にする「技術」みたいなものが必要なわけですが、いつでもその通りに描けるというわけにはいかず、そこで試行錯誤、悪戦苦闘がある、ということなのですね。

たとえいい絵が描けてもそれが納得する絵でなければ消してしまう。「消してる時点で動揺してるんですよね」という山下さんに、「あの絵はいらん!て消すところが気持ちいい」という浦沢さん。「とにかく必死なんですよ」という山下さん。この辺りに創作の秘密、のようなものが隠されている感じがしました。

つまり、プロのマンガ家さんが上手いのは、自分の描きたいイメージが到来するということでもありますが、そのイメージが納得出来る絵になるまで何度でも描き直す、納得出来ない線では出さない、という単純なことで、アマチュアである私などが上手く描けないとか言って投げ出すのでは上達しないわけで、上手く描けるまで何度でも何度でもトライしてみると言う単純なことが大事なんだ、ということが良くわかります。

山下さんのネームの線はシンプルで、ネームの間まで読んでも十分面白そうな感じ。この時点でもう形は大体決まっている、という感じです。もっと分けの分からない線のままネームとして出している人が多い気がしますが、山下さんのネームはとてもきれいです。彫刻がもう大体彫り出された感じ。それを編集者さんの意見を聞いて何度でも描き直すのだそうですが、ネームが通ってからの悪戦苦闘がまた凄いのですね。

ネームから下書き、下書きから原稿でここまで変わる人は珍しい、と編集さんは言いますし、何を言われてもいいのでとりあえず思ったことは全部描く、そうしたらその中にダイヤがあるかもしれない、と山下さんは言われます。なるほど、そういう考え方なのですね。

ペン入れの作業も面白く、目などは丸ペンで描かれているのですが、「すうっと二重線が入る感じ」が山下さん独特だ、と浦沢さんは言います。そんなに力まないで書いて大丈夫か、と思うくらい力んでないタッチだ、というのですね。それは80年代の少女マンガの線だ、と山下さんはいいます。

吹き出しの書き方も難しいと山下さんは言いますが、そこから大友克弘さんの無愛想に丸い吹き出しが衝撃的だったとか、見開きのおじいさんの絵が衝撃的だったとか、お互いに感想を言うところもマンガ家さんらしかったのですが、大友さんの絵は今主流になっているので大友さんの絵が衝撃的だったということ自体を理解してもらえない、という話も面白かったです。

山下さんは恋愛のワクワク感を描くのが苦手で少女マンガにはあってなかった、と振り返ります。ナレーションが、深い人間観察で人間を描く青年マンガの方が山下さんにあっていた、と言っていたのですが、本当にどういうジャンルに自分が巡り会うか、ということの大切さみたいなものはあるよなあ、と思いました。

一番焦点が当たっていたのは杏が夜、外の世界に行くことができる、イノシシの皮を被った少年を再び目撃する幻想的な場面なのですが、いつも無謀なことを考えるから大変なんですよ、山下さんは言います。無謀だと思ってもトライするということですね。この絵は本当に何度も描き直され、最終的に和紙で墨で一枚絵に描く、というマンガなのか?という形になるわけですが、(これは初めてのトライなのだそうです!笑)浦沢さんは凄いシーンが撮れたね、と感心し、半ば呆れながら見ています。墨がどこに流れて行くか分からない、予測不可能な感じが出て初めて悪夢という感じが出る、という会話にはなんだか凄いものがあると思いました。

和紙に墨の一枚絵ではホワイト(修正液)は使えませんし、少し失敗したと思っても「味」にしてしまえ、ととにかく描いて行く。失敗したらまた一からやり直し、というのでは締め切りのあるプロのマンガ家の作業としてはある程度限界がありますし、ヒヤヒヤで描いている感じがすごく感じられました。こんな綱渡りで制作されているのか、と思うと作品がまた違うものに見えてきますし、面白いなあと思いました。

マンガの制作過程でない感じだ、と言う山下さんに、浦沢さんは本来この自由さがあってしかるべきですよね、マンガって、と答え、それは本当にそうだな、と思いました。ちょっとした感じのところで定石を打ち破る、というところが山下さんにはある、というと、人生行き当たりばったりなので、と答え、なるほどそういう人でないと数寄屋造りの家は建てられないよなあ、とか妙に感動しました。

生き方と制作が一本の線で繋がってる、それはでも山下さんだけではないんだろうなと思います。

描き始める時はいつも白紙、今度はこれを埋められるのかという恐怖感、と浦沢さんが言うと、だから私はこの家を建てたのかもしれない、と山下さんが答えます。つまり常に、「描くしかない、描かないとローンが払えない!」という状態に自分を追い込むために建てた、ということですね。滅茶苦茶です。(笑)でもやれてしまうところが凄い。何か借金に追われて書きまくっていたバルザックみたいだな、と思います。

そういうぎりぎりに立たないと新しいものはもう作れないな、という感じがあるというのは、これも凄く良くわかるんですよね。まあもともと新しいものを作るというのはそういうエッジに立たないとできないことなんだと思いますが、年をとってくるとなかなかそういうエッジに立つことを避けて、安楽な方に流れそうになる。自分を駆り立てるために、というものが必要だ、というのは良くわかります。

仕事そのものが人生を語っている、という感じがとても良く出た番組だったと思います。絵を描くという仕事、マンガというもののすごさ素晴らしさというものを、あらためて感じさせられた番組でした!
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