個人的な感想です。

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篠原ウミハルさんの「図書館の主」第9巻を読みました!ピーター・パンの話が特に印象に残りました!


図書館の主 9 (芳文社コミックス)図書館の主 9 (芳文社コミックス)
(2014/11/15)
篠原ウミハル

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篠原ウミハルさんの「図書館の主」第9巻を読みました!

週刊漫画Timesに連載の「図書館の主」、もう9巻になりました。

この巻は全部で8話収録ですが、69〜70話が「空の飛び方」、71〜74話が「専門職として」、75〜76話が「ゆかいな仲間」という2話から4話完結の話になっています。「ゆかいな仲間」は完結話が次巻おくりになっています。

「空の飛び方」で取り上げられているのは「ピーター・パン」。「ピーター・パン」と言えばミュージカルなどでよく上演される演目で、ピーター・パンがウェンディたちと一緒にネバーランドへ行ってわくわくドキドキの冒険を送る、というストーリーですが、実はそれだけの作品ではないのだそうです。(私も知りませんでした)

小説のピーター・パンは、ウェンディたちがネバーランドで生活し、親のことを忘れて行く間に、彼らの両親は子供たちがいなくなったのは自分のせいだと苦しんで、それでも子供部屋の窓を開け放って、子供たちが帰ってきたときに困らないように、信じて待っていたのだそうです。だから、「ピーター・パン」という物語は、そんな信頼関係から、子供たちは必ず家に戻る物語になっているのだそうです。

そして家に戻ったあともピーター・パンは毎年ウェンディを1週間ネバーランドに連れて行くのですが、年が経つとだんだん訪れることもなくなり、数年経ったあとピーター・パンがウェンディを訪れると、ウェンディはすっかり大人の女性になって、結婚して母親になり、飛び方も忘れてしまっていた、のだそうです。

そしてピーター・パンはウェンディの娘ジェインに飛び方を教え、彼女をネバーランドに連れて行くというのです。自分も一緒に行けたらいいのに、というウェンディにジェインは「だってママ飛べないでしょう?」と言って、ジェインはピーター・パンと一緒に飛んで行ってしまう、というお話なのだそうです。

これは親の側からみるとかなりショッキングな話ですね。

このストーリーが、タチアオイ児童図書館の常連の一人、アメリカ人の女の子クリスの、日本になじめないお母さんの話と重ねて語られるのですね。娘のクリスがどんどん日本になじんで日本語も話せ、友達もできて行くのに自分は友達もできず、家に引きこもってしまっている。そんなお母さんのことを、主人公の司書の御子柴は「お母さんも昔はウェンディだった」と表現しているのです。そしてティンカーベルのようなクリスに、お母さんのことも理解してあげろ、というのですね。

私はピーター・パンは子供向けの話しか読んだことがなく、それすら細かいところは忘れています。よく「ピーター・パン=シンドローム」とか「ウェンディ・ジレンマ」などと心理学にも使われていますけれども、御子柴は同じく常連の5年生の翔太たちには「いつまでも子供のままで同じ場所にいることなんてできない、ピーター・パンてそういう話なんだよな」と理解させます。子供のままでいるのか、大人になるのか。よくいわれるそのテーマにも言及しています。いろいろと印象に残りました。

71〜74話の「専門職として」は専門職である「司書」とはどういう仕事か、という話がテーマ。どんな専門職でも同じですが、仕事の中で後輩に何を伝えて行くのか、ということがテーマになっていました。

ここで語られるのが新美南吉の短編「ひとつの火」。提灯や蝋燭を売る店の息子の「わたし」がある日蝋燭を買いに来た牛飼いに灯をともすように頼まれ、初めてマッチを擦って灯をともす。それで想像するのです。牛飼いのために自分のつけた火が、誰かがまた火を借りて自分の提灯に移すのではないか、その火は次々と移されて、今でもともっているのではないか、と想像する、というお話です。

専門職としてともした火が、ずっと誰かに伝えられて行く、それを願っている、というお話でした。これも印象的なお話でした。

75〜76の「ゆかいな仲間たち」は常連の会社員・宮本とその友人たちの話なのですが、ケネス・グレーアムの「たのしい川辺」というお話が中心になっています。モグラと川ネズミたちの仲間にひきがえるがいて、このひきがえるというのがひどいやつで、金持ちで自慢ばかりしていて移り気で落ち着きがなくて口ばかりで何を言われても反省しない、というやつなのに、なんだか憎めない、というお話なのだそうです。

友達って何だろう、ということを考えさせられる、そういうお話しになるわけですね。

3話完結で最初の2話だけですので続きは次回という感じですが、この巻はいろいろ面白い話が多いなと思いました。

この作品は様々な童話や児童文学が取り上げられ、それについて語られているので、やはりもとのお話を知っているかどうかというのは楽しめる大きなポイントになるなと思います。そして、読んでなくても楽しめないことはないのですが、読んでいると受け取り方の深さが変わって来るように思います。

現代の登場人物たちの抱えている現代の個人の問題のようなものが、童話・物語に投影されることによって別の角度が見えてくる。そこに、問題を乗り越える何かの糸口が見える、というような構成になっているところが面白いと思います。

取り上げられている児童文学を、なかなか読むところまで行かないので感想も書きにくいのですが、そこに出て来る人間ドラマとそれの鏡として取り上げられる物語という構造は、メタ的ですが面白いなと思います。

そしてその構成で9巻も続くほど、多くの素晴らしい児童文学作品があるということは嬉しいことだな、と思うのでした。
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