個人的な感想です。

マンガ・アニメの感想を書いていきます。『進撃の巨人』『ぼくらのへんたい』『ランドリオール』など。

眉月じゅんさんの「恋は雨上がりのように」1巻・2巻を読みました!

恋は雨上がりのように(1) (ビッグコミックス)
眉月じゅん
小学館


眉月じゅんさんの「恋は雨上がりのように」1巻・2巻を読みました!

最近、気になっているというか、あちこちで評判を聞くマンガがありました。それが「恋は雨上がりのように」です。私はもともと「重版出来!」が目当てで月刊スピリッツをときどき買っていたのですが、同じ雑誌に連載されているこの作品を、ちらちら読んではいました。でもそんなにすごく印象に残るという訳でもなかったので、この作品が評判なのがちょっと不思議だなと思っていたのです。

しかし、「このマンガがすごい!の月間ランキングで上位に入っているのを知り、山下和美さんの「ランド」と上位を争ったりしているのを見て、へええ、と思ったのですね。

調べてみると、第1巻は3月のランキングの4位、第2巻は6月のランキングの7位でした。「このマンガがすごい!」は単行本単位の評価なのですね。そして「3月」のランキングは1月発売のもの、「6月」のランキングは4月発売のもの、ということで、月刊誌連載なのにわずか3ヶ月で次の巻が出ているという超ハイペース。「進撃の巨人」でさえ4ヶ月に1巻のペースなのに、です。

これは、私が何か見落としてるのかもしれない、という気がしてきて、ちょうど手元にあった月刊スピリッツ5月号を読み直してみました。すると、この号には15話と16話の二話が掲載されていて、のべ36ページ。なるほどこのペースなら3ヶ月で1巻も可能だなと納得しました。隔週刊の連載ペースですからね。

そして、読んでみると面白い。しっかり読むと面白さがよくわかります。そこでTSUTAYAに出かけて単行本の1、2巻を買ってきました。

「目の大きな美人の女子高生のバイトと中年の冴えないファミレス店長の恋愛」という話だけ聞くと、何だ中年男性の妄想狙いかとあまり読む気がしなくなってしまうのですが、要するに妄想力が逞しい年代の女子高生のある種の暴走から話が展開して行くというもので、つまりは女子高生の妄想もの、の系列だと思うと面白いし、どちらに思い入れするかと言えば私なども年齢が近いファミレス店長の近藤よりむしろ主人公の女子高生・橘あきらの方なんですよね。

要するに、この年代の女子の、「箸が転んでも可笑しい」のとある意味同じ方向性の、何でもかわいいというのと同じ方向性の、きっかけさえあればあれっと思う対象にでも恋してしまうような、そう言う話だと。それが普通だと、というか現実だとなかなかあんまり面白い話にはならない訳ですが、冴えないように見えて実は店長はいろいろと隠れた魅力を持った男だということが明らかにされて行く訳で、何だか応援したくなって行く、というところが面白いのだと思います。

この主人公は、目が大きくて美人で背がピンとしててスタイルがいい。でもとにかく無表情で、大きい目でじっと見つめられると睨んでるような感じがして怖い、と思われてしまう。その設定がすごく自然に実現しているのでどういうことなのかなあと思っていたのですが、じっくり読んでみると、実はこの子だけがものすごく目が濃く、黒目も大きく描き込まれていて、ほかにかわいいという設定の子はいるのですが、目の圧力が全然違うんですね。

あ、よく見たらもう一人いた。陸上部の喜屋武はるか。でもこの子は沖縄出身という設定なのでしょう、色も黒いし感情も豊かな目をしています。あきらのすごいところは、目が大きくて黒々としているのに、感情らしい感情が目にほとんど出ていないところですね。たしかにこれはじっと見られると睨んでると思われるかもしれない。でも、優しい顔をするときがときどきあって、その落差が激しい。これはやはり相当な画力なんだなあと思います。

1巻ではあきらの身の回りのこと、ファミレスの様子、店長の冴えなさ、店員たちからも割と軽く見られ、客にはいつも謝ってる、という感じの様子が描かれる訳ですが、あきらは一途に店長のことを見ている。店長自身もじっと見られていることに気がついても、「ゴミでも見るような目だったな」という感想。思いが全然伝わらない系の女子、ということも確かなのですが、まあつまり店長自身が恋愛というものについてあまりに卑屈になっていると言うふうに言ってもいいわけですね。

でもなぜ、あきらは店長のことが好きになったのか。うーん。このあたり、第8話にあるのですが、先入観なしで読んでいただいた方がいいかもしれません。大人の優しさ、みたいなものがこの年代の子にはすごく心に響くことがある、訳ですけど、まあそんなようなことと言えばいいのでしょうか。でもホント、そう言うのって心の中に実がないと出ない部分でもあり、そう言う意味ではあきらの「人を見る目」は確かなんだよな、と思います。

題名は、RCサクセションの「雨上がりの夜空に」が好きな世代を狙ったのかな、という感じがしてちょっとどうなの、と読む前は思っていたのですが、どこかの書評にもありましたがすごく空や天候が描かれている作品で、「雨上がり」という題名、すごくあってると思います。こういう「狙い」というのは多分あったのだと思いますが、それで魅かれる人もいればかえって拒絶してしまう人もいる訳で、なかなか難しいものだなと思います。

印象に残っている話はいくつかありますが、8話以外には6話から7話。忘れ物をした客にスマホを届けるため、ダッシュして追いついたあきらでしたが、元陸上部でアキレス腱を断裂するような大怪我をしているあきらはそのことで炎症を起こしてしまい、慌てた店長に来るまで病院に連れて行かれます。そのときに店長の前で靴下を脱ぐのをためらうのですが、それは傷を見せたくないということではなく、多分何もしていない足を見られたくなかったのですね。

そして、家に帰ってから肩を借りて歩いたりしたことを思い出してひとりで幸せな気持ちになってるときに(ちょっと描写が色っぽくなってますが)店長から電話がかかってきて、その番号を自分の携帯に登録し、さらに幸せな気持ちになる。そしてレントゲンを撮りに行ったとき、足にはきれいにペディキュアがされていて、この足を店長に見せたかったんだろうな、と思わせる訳ですね。かわいいし、まあ妄想系女子高生の持つ本質的なエロスみたいなものが絶妙に描かれているなあと思います。

そして店も休み、暇なのでコンビニに買い物に行こうと松葉杖をつきながら外にで見ると、なんと店長がお見舞いに来るところで、ほかのファミレスに入って話をしているうち、ペディキュアを見られて血豆だと思われたりして笑ったり、店長は熱心にそのファミレスのドリンクバーの配置を観察していたり、あきらが一人で座っているのを見てデジャビュを感じたり、(これは8話の伏線ですが)しているうちに、あきらがぽろっと「あたし店長のこと好きです」と言ってしまう。しかし、嫌われていると思っていた店長は「ほんとにー?ありがとー!」と嫌われてなかった、ということだけを無邪気に喜んでいて、勢いとはいえ告ってしまったあきらはもやもやしてしまう、というところが最高ですね。

で、友達に相談しようとしても出来ず、ヤフー知恵袋みたいなところに「好きな人に好きですと言ったのだけどありがとうと返されてしまいました。気持ちは伝わってるでしょうか」と質問してみたら「わからないフリをして振られたんじゃないですか」と言う返答が帰ってきて凹んだり、同じクラスで同じファミレスでバイトしてる吉沢(彼はあきらが好きなのでバイトを始めた訳ですが)に店長の様子を聞き、自分を心配してくれていると聞いてそれを「知恵袋」に捕捉したら、「単純に嬉しかったのでしょう、恋はまだ始まったばかりです、頑張って」と帰ってきて「ベストアンサー」!!と思ったりするところがすごく上手いなと思いました。

きっとこうことで一喜一憂してる人って沢山いるだろうと思いますし、可笑しくて仕方なかったです。

このあとから2巻にかけての展開はまたすごく良く描けているなあと思いますので、ぜひ単行本でお読みいただきたいなと思います。

もう一つ印象に残ったことを書いておくと、同じファミレスのバイトで早稲田(でしょう)の学生のチャラ男の加瀬と言うキャラクターが出て来るのですが、ふとしたはずみであきらが店長のことを好きだと言うことを知ってしまい、それをネタに脅して自分とデートさせる訳ですが、そのときにあきらが全然素っ気ない格好をしてきてゾンビ映画を見るのですが、要するに結局前々相手にしない訳ですね。でも加瀬はめげずに「君と店長は上手く行かない」とかいやなことを言うだけではなく、隙を狙ってほっぺたにチュッとして去る。あきらが本気になってごしごしとそこをこすっているのが可笑しいです。つまり、基本的にはものすごく気が強いキャラなんだと言うことがわかって可笑しかったです。

で、次に店長とデートするときにはすごくかわいい格好をしていて、で、結局同じゾンビ映画を見る羽目になるのが可笑しい。加瀬とのときは早く帰りたがっていたあきらが、店長とのときは何とかして少しでも長く一緒にいようとする。でも、上手く意志を伝えられなくて、「あたし!喉がかわきましたっっ!」と叫んだりする。

そして一番印象に残る場面は、喫茶店から出てから店長の電話が鳴って話をして戻ったときの、あきらの姿。もうこれはボッティチェリの「春」のような、身体の線がはっきりと出ていながら薄い衣裳が風にたなびいている感じで、しかもなんというか、近頃のキャラクターには珍しく巨乳ではない。陸上部で足が速い子ならそれはそうなんですが、その美しさに店長が圧倒されるところですね。

そして去り際に、あきらは駆け寄って店長のほっぺたにキスをする。という妄想をするわけです。そして、帰ってから映画パンフを母親に加瀬と一緒に行ったときのものと一緒にさせられてしまって怒ったり、この辺すごくあざといといえばあざといんですが、やはり上手いなあと思いました。

ある意味、よくあるネタをどうやってみせたら面白く出来るか、という手練手管がすごい、ということなんだと思いますし、そこに人間とか恋愛の真実のようなものを見せることが出来ている、のだと思います。

ちょろっと見ただけでは狙いのあざとさみたいなものが鼻についてしまってあまり読む気がしないのですが、でも全然それを超えた作品に仕上がっている。そんな女子高生好きのおじさん狙いの作品なんか読まないぞ、と最初は思っていましたが、読んでみると、まあそんなふうに思ってしまうのもこちらが決して若くはないオトコのある種のひがみなんだろうなあという気もしたりして、食わず嫌いはもったいないなあと改めて思ったのでした。

という訳で、この作品、面白いです。月刊スピリッツも、「重版出来!」「阿吽」だけでなく、私の中でまた楽しみな作品が加わったなあと思いました。
スポンサーサイト

*Comment

NoTitle 

失礼します!恋は雨上がりのように、の一ファンです。あきらと店長のデートの最後にあきらが店長のほっぺにキスをすると書いてありますが、あれは実際にキスしていません。あきらのキスできればいいのにという願望を表している画です。
訂正おねがいします!
  • posted by  
  • URL 
  • 2015.10/26 18:03分 
  • [Edit]

Re: NoTitle 

> 失礼します!恋は雨上がりのように、の一ファンです。あきらと店長のデートの最後にあきらが店長のほっぺにキスをすると書いてありますが、あれは実際にキスしていません。あきらのキスできればいいのにという願望を表している画です。
> 訂正おねがいします!

ご指摘ありがとうございます。
言われて読み返してみましたが、確かにそうですね。
妄想部分と現実の入れ方、気合い入れて読んでないとわからなくなってしまいます。
ありがとうございました。訂正します。
  • posted by kous377 
  • URL 
  • 2015.10/29 11:02分 
  • [Edit]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

Menu

プロフィール

Author:kous377
FC2ブログへようこそ!

最新記事

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR