個人的な感想です。

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Eテレで「浦沢直樹の漫勉」第1回、東村アキコさんの回を見ました!

Eテレで「浦沢直樹の漫勉」第1回、東村アキコさんの回を見ました!

かくかくしかじか 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)
東村アキコ
集英社


以前このブログでも取り上げた「浦沢直樹の漫勉」。(こちらこちら)マンガ家さんの制作風景に密着し、それを映像として記録する。他のマンガ家さんの制作風景を見たことのないマンガ家さんにとっても、純粋な読者にとっても堪えられない企画だと思います。前回は一回のみの放送で、「YAWARA!」他の浦沢直樹さんご本人と、「沈黙の艦隊」のかわぐちかいじさん、「ランド」の山下和美さんの3人が出演されていて、すごくインパクトがありました。

前回の放送ではツイッターでもマンガ家さんたちが一生懸命ご覧になっているのがよくわかったのですが、一般的にも評判が良かったのでしょう、ありがたいことにシリーズ化されて一回につき一人ずつ取り上げて番組化されることになったようです。

その第1回は東村アキコさん。私は東村さんの作品では「海月姫」が一番好きですが、浦沢さんを始め今まで出演された方は講談社の「モーニング」に連載をもたれていた、ないしは現在も持っている方ばかりで、今回の東村さんもモーニングでは「ひまわりっ」をはじめ何作か連載をされていました。

ちなみに、コミックナタリーによると最初の放送はパイロット版という位置づけだそうで、今回から4回をファーストシーズンとして放送し、来年セカンドシーズンとしてまた放送されるとのことで、とても楽しみです。ファーストシーズン、次回は藤田和日郎さん。「少年サンデー」で「うしおととら」を連載されていた方だそうです。(私は読んでないので、よく知らなくてすみません)3回目は浅野いにおさん。このかたも私は読んでないのでよくはわからないのですが、「ソラニン」という作品を一番耳にしたように思います。「ヴィレッジバンガードでよく売れる作家性の強い作家さん」という印象があります。4回目はさいとう・たかをさん。この方は言わずと知れた「ゴルゴ13」の作者さん。昔から組織的に作品を多く生産されてきたと聞いたことがあります。それぞれに個性的なマンガ家さんが取り上げられていて、とても楽しみです。また、藤田さん以下はモーニングとはあまり関係なくなりますね。

さて、今回の東村さん。今までも「ひまわりっ」や「かくかくしかじか」など自伝的な内容の作品を多く描かれてきている(両方とも全部読みました)こともあり、なんとなく「この人知ってる」的な印象の強い作家さんではあるのですが、制作風景は印象深いところが沢山ありました。

簡単に言うと、今まで「漫勉」で見てきたマンガ家さんのうち、一番自分が思っている「マンガ家さん」のイメージに近い作家さんだったなということです。

私が最初にマンガに触れたのは1960年代後半。小学館の学習雑誌をのぞけば赤塚不二夫さんの「もーれつア太郎」や石森章太郎さんの「サイボーグ009」、永井豪さんの「ハレンチ学園」、手塚治虫さんの「鉄腕アトム」などが最初に触れたマンガだったと思います。長谷川町子さんの「サザエさん」や藤子不二雄さんの「ドラえもん」は学習雑誌で読みましたし、手塚治虫さんの「不思議なメルモ」などもそこで読みました。まだ「はだしのゲン」を描く前の中沢啓治さんが「科学と学習」の付録小冊子に「青木昆陽」のマンガ伝記などを描かれていたりした頃です。

あの頃の作家さんは、売れっ子になると週刊誌を掛け持ちするというのも当たり前でしたし、月産数百枚ということをよく聞いていました。ですから、江口寿史さんが「ストップ!ひばりくん」で何度も休載したころをへて作家さんが定期的に休載したりするようになり、また同人誌出身の作家さんも増えてきてお互いにアシスタントをしながら作品を制作されているのを聞くと、月産数十枚でも相当すごいという印象になってきていたのですが、東村さんはここ10年程月産100枚というペースで描かれているそうで、その辺も自分の持っているマンガ家さんのイメージに近いなと思ったのだと思います。

浦沢さんは、マンガ家というものは同じ業種に見られているけれども、ひとりひとりやっていることは全然違う、一人一業種、一人一ジャンルみたいなものだ、と言います。でも、人物の表情を描くことに心血を注ぐ、というところは共通するところが多いのでしょう。弐瓶勉さんや五十嵐大介さんのように背景抜きには語れない、という方ももちろんいらっしゃるわけですが、最もマンガらしいマンガ、というのはやはり人物の表情がポイントだろうなとは思います。「線を描いているだけなのに、そこに感情が宿って来る瞬間というのが、息を止めさせるもの」と言われるのは、やはりそういう線が描ける方にしか言えないわけで、素直にすごいなと思います。

東村さんも、「キャラクターの顔が一発で描けた時が一番楽しい」と言います。降りてきたようにすっと顔が決まる。東村さんは頭の中に沢山描くべき物があって、それをどんどん描き出している、と別のところで言っていますが、まさにモーツァルトみたいな感じではあります。現在5つの連載を抱えているそうで、取材日も「雪花の虎」(上杉謙信は実は女性だった、と言う歴史もの)の締め切り日で、一気に38ページを仕上げる、という日だったそうです。スタジオは何部屋もあり、アシスタントは10人以上。11時にスタッフが集合し、下書きから始まって仕上げるのは午後7時とのことですから、8時間でほとんど白紙の状態から完成原稿になるわけですね。「一気にやるんで私」と言っていますけれども、色々な方の話を聞いたことから言うと、やはりとんでもないことのように思われます。飲みに誘われた時に下絵を何枚か持って行って人を待っているうちにやってしまうとか、やはりモーツァルトの逸話を思い出させます。

東村さんの原稿の特徴は、そのスピードにある、と浦沢さんもこの番組を見ながらtweetしていたマンガ家さんたちも皆言われるのですが、確かに早いなと思いますけれども、子育てしながらマンガを描いていたので、「とにかく原稿を落とさないために」早くなった、主線(おもせん)さえ入れておけばとりあえず印刷には出せる、という感覚で描いていた、と言います。浦沢さんも、その考え方が連載何本というのを支えるね、と賛成していて、まあこのあたり、私自身の物を書く時の感覚に近いな、と思いました。

ずっとGペンで描いてて、ドボッとインクをつけてずっと描き続ける。ネームはぶっつけでどんどん頭の中にある物を絵にして行く感じで、どんどん進みます。ツイッターなどを読んでいてもネームで苦労する方が多いようなので、ここのところはすごいと思いますし、私の頭の中にある天才的なマンガ家さんのイメージそのまま、という感じで、なんか逆に違和感がなくて可笑しかったです。

そう、一言で言うと、東村さんの仕事ぶりというのは、あまりに違和感がないところに違和感がある、という感じなのですね。自分の知らない職業の人の仕事ぶりというのはやはり理想化していますので、実際にはみんな苦労してるはずだ、とむしろ自分を納得させようと言うところがあるのですが、東村さんはそんな無駄な努力?を嘲笑うかのように、絵に描いたような天才漫画家という役をあまりに自然に見せてくれる。そんなはずはない、そんな違和感のないはずはない、でも実際描いてるんだよなあ、というのが私が東村さんの仕事ぶりを見た時の印象でした。

ネームを描いていてすごく楽しい、仕事って思ってない、という東村さん。浦沢さんも、ネームを描く時は丸描いてバッテン、みたいな書き方はしない、そうすると「お絵描き」でなくなって、楽しくなくなってしまうので、と言っていて、なるほどやはり楽しくないといけないというか、表現はツラいモノだ、みたいな今まで数十年かけて塗り籠まれてきたような感覚がおかしいんだ、ということに気がつかせてくれたなあと思います。まあこのへん、まだまだ剥がして行かないといけないとは思うのですが。

ネームを、公文式を解きながら左腕の上に頭を乗せて寝ている子供みたいな感じで描いてる東村さん。何というか、自分の中の「子ども性」をそこでむしろ引き出しているのかもしれないな、とさえ思います。表現には色々な方法があるのは確かですが、やはりマンガは「楽しい」という部分がなければ売れない。その楽しさを引き出すためには、自分の中にその「楽しさの素」みたいなものがなければいけないのではないか、と思います。ネームをやってるうちに眠くなり、夢の中で出来る、という東村さん。私などでも少しわかる気がします。自分が物語を書いている時は、やはり夢と現実の間にいるような感じはありますので。

それからギャグシーン。東村さんのギャグシーンは一つのコマに沢山のセリフと沢山のキャラを詰め込むという特徴があるわけですが、その中には適当な絵、適当なセリフもある。そのどうでもよさがいい、きちんとし過ぎてるとかっこ悪い、というセンスがあるようで、そこのところはやや好みが別れるところでもあると思いますが、そういう風に考えてやってらっしゃるんだなということはわかりました。「マカロニほうれん荘」の影響が強い、というわけです。さらに浦沢さんは江口寿史さんや高橋留美子さんの影響も指摘し、東村さんもうなずいていました。

「その人の部屋を見ればその人がわかる」というのと同じで、その人が住んでいたところを見ればその人がわかると考えて上杉謙信の住んでいた春日山城跡を訪れた、というのはなるほどなあと思いました。で、わかっちゃった、生活のサイズが、というのが面白い。察しが早い、と浦沢さんが指摘すると、「人の家に行ってもどこにホッチキスの針が入っているのかとかがすぐわかってしまう子どもだった」と答えていて、何だかおかしかったです。私もわりとそういうところはありましたので。

それから背景の話。基本的に背景はいらない、というのが東村さんの意見で、昔のまんがなんかほとんど背景がなかった、というのはその通りだと思います。最初の一コマに背景があれば、あとは脳内補完で行ける、ということでふたりの意見は一致していました。

それから「ひまわりっ」を書いている頃から横山光輝さんの「三国志」を模写するようになり、その辺から影響が強くなった、というのはすごく納得のいくものがありました。「海月姫」の月海とかどこかでこういう感じの絵があったよなあと思いながらよくわからないでいたのですが、そのルーツは横山光輝さんの絵だったのですね。これはすごく腑に落ちました。

「あんなに少ない線でイケメンがあんなにイケメンのマンガってあるのかな」って言うのは、なるほど言われてみたらその通り。もうそういうマンガだと最初から思っているので不思議にも思いませんでしたが、考えてみたら簡単なことではないですよね。どうもそういうところの私の見方は甘いなとちょっと反省させられました。確かに、模写をしたりすると、その絵のすごさがわかるのかもしれないなと思います。

美人の絵というのは必ずしも難しくない気がしますが、イケメンの絵というのは実は難しい。ホントに一ミリの数分の一でも構図がずれるとしまらない顔になってしまうのですよね。それで沢山のカッコいいキャラクターを描き分けている三国志は本当にすごいということになります。うーん、なるほど。

それからキャラクターの着ている物。本来は、この柄を誰がどう考えて染めたかとかまで考えて描かなければいけないと思っている、というのはうーん、すごいなと思いますし、その適当さと力の入ったところのメリハリのつけ方がすごいですね。ホワイト(修正液)だけでなくホワイトインクでカブラペンで白の線を描いて行くところも面白い。あんなインクってあるのだな、ともいました。

古くなるのが一番いや、下手でもいいから新鮮みが欲しい、という感覚も私もあるのでよくわかります。

物の重みとかふわっとした感じの重みとかを気にしている。それはすごく絵描きさんの感覚だなと思います。やはり「かくかくしかじか」に出てくる特訓の成果でしょうか。

最後に目を初めとするディテールを徹底的に丁寧に入れ直していく。それが「最後のお楽しみ」なのだそうです。確かにここで仕上げが入ると、絵にいのちを吹き込まれた感じがします。

そして「かくかくしかじか」のこと。本当は何も考えないでいくらでも描けるんだよ、というポーズで行こうと思ってたけど、やはりウソだなと思って、(高校時代に地獄のように絵を描いていたと言う)本当のことを描いてしまった、とあっけらかんと言えるところが、やはり天才なんだなと逆に思ってしまいますね。天才は努力しない、わけではないですからね。

それから大ゴマの描き直しをしているところで、目の下のライン(涙袋のライン)の描き方一つ、0.1ミリで全然変わる、というのがホントにそうだなと思いました。自分が描いていても、線を引くのに一番怖さを感じるところなんですよね。やっぱりプロでもそうなんだなと思うし、そこで満足の行く線が引けるのがプロなんだなと改めて思ったわけです。

達人を目指している感じがいい、という浦沢さんに、「シャットやるだけでざっと絵が出来る世界に行きたい、その方がマンガがよくなる」という東村さん。天下を取るという雰囲気があるという浦沢さんに、そういう人が好きだ、という東村さん。

いやあ、色々と考えさせられました。

一番思ったのは、やはり制作が苦行になっている人ばかりを見ていたせいで、「楽しさを引き出す行程」みたいなものが意識不足になってたなと言うこと。あんなに楽しく描いて天下を狙ってる人、というのは本当に初めて見ました。モーツァルトやプーシキンなんかも、実はこういう野心もあったんだろうなという気がします。

でもそれには、「地獄のように描いた」ことでささっと描けるデッサン力みたいなものが身に付いたということが多分とても大きいんだと思います。とにかく描かなきゃいけない。日高先生の遺言のように「描け」という言葉が残っていますが、そこから全てが始まる、そこからしか何も始まらない、ということもまた真実だなあと思います。

絵という物、マンガという物にこだわる地点というのは人によってそれぞれだと思いますが、私には東村さんが一番根源的なところでマンガという物と自分の存在が結びついているように感じられました。

私が感銘を受けたのは、むしろそういうところかもしれません。本当に幸せなマンガ家さんなんだな、と思います。マンガのある時代に生まれて、マンガに出会って、マンガ家になった。そのことの幸せという物が、一番感じられる作家さんだな、と思ったのでした。
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