個人的な感想です。

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おかざき真里さんの「阿・吽」第3巻を読みました!

おかざき真里さんの「阿・吽」第3巻を読みました!

阿・吽 3 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
おかざき真里
小学館


月刊スピリッツ連載のおかざき真里さんの「阿・吽」。修業時代の最澄(阿=顕教)・空海(吽=密教、と言うことでしょうか)の二人を主人公とし、奈良時代末期から平安時代初期の政治・社会情勢を踏まえつつ、歴史と何か得体の知れない「もの」に翻弄されて行く日本人たちを描くなかで、ただ二人、真の己を見いだし未踏の道を切り開いて行く二人を描いた作品です。とにかくこの二人のキャラの立ち方は言語に絶するものがあります。

この3巻は、主に空海のターン。まだ佐伯真魚という名の世俗の少年だった空海は、叔父・阿刀大足の元での大学での儒教の学問に飽き足りずにそこを飛び出し、僧・勤操の紹介で各地の寺で仏教の経典を読みあさる。

しかしまだその教えに納得のいかない真魚は、勤操の勧めで虚空蔵求聞持法という修行に、室戸岬で挑みます。これは厳しい修行で、空海の一族の智泉がそばについて行われますが、この厳しい修行の部分が圧巻です。

修行を終え、勤操の元に戻った真魚は、「我を見た」と言います。「我とは何か、どこからどこまでが我か」という問いに真っ向から取り組んでいた真魚の見たもの、それは、巨大な魚いる海のそこに降りて行き、渦の中で太古からの生物の群れを見て、自らがそこに溶け合うのを感じる、というもので、これは私の解釈としては、全ての生命と一体である自分を感じた、と言うことではないかと思います。

この、ある種の悟りの描写、これは多くのマンガ家さんたちが取り組んで来ていて、手塚治虫さんの「ブッダ」やたかもちげんさんの「祝福王」などにも、ある種の似たイメージがありました。

その中でこの岡崎さんの描写は、何というか非常に華麗なものを感じました。それはおそらく、空海の持つ絢爛たるイメージ、仏教の中でも密教が持つ豪奢なイメージが反映されている、のかなあと思います。

後半は、真魚が高野山へ行き、そこで丹生都比売と言う神に会う話。人として描かれていますが、やはりこの古怪な時代の感じ方として、神と人間の距離の近さのようなものから、折口信夫さんの「死者の書」にあるような、あの雰囲気の中からある種肉感的な女性のような描写の丹生都比売が現れ、土蜘蛛族を守護しています。

真魚はそこで自らの名を「空海」と名乗り、「私は飽いている」という丹生都比売に「近い将来、私がこの里を引き受けよう」と言います。この力強さ。そうですね。空海と言うのは、その人物の特徴は、その力強さだと思います。

そしてラストでは、最澄と空海が期せずして唐に渡り、仏法を追求すると言う決心を述べるところで終わります。

このマンガの感想を書くのはかなり大変です。自由奔放にイメージがふくらんでそれが超自然的な形を成す、と言うところは岡野玲子さんの「陰陽師」に似たところがありますが、岡野さんのみやびな描写の展開に比べておかざきさんは荒々しい。しかしそれが決して男性作家の荒々しさのようにならないのは、山岸凉子さんのような細い線がその描写の中心になっているからでしょう。

そしてまた、動きのある場面での大胆な大振りの効果、線そのものの存在感。このへんは「ボールルームへようこそ」を思い出します。細かいコマの重ね方と大きいコマとの切り替えのリズム、そして今気づきましたが(気づくのが遅い)マンガの鉄則とも言えるコマとコマの間の白い空間が一切ないのですね。一本の線のみで全てのコマが切り替えられている。全てのページが、一枚絵のコラージュのように並べられている。これを自然に見せるのは、実はかなり難しいのではないかと思いました。

このマンガの感想を書くのが大変なもう一つの理由は、この作品が史実に対する解釈という面があるためで、つまりは内容に踏み込もうとするとかなりきちんと調べないといけないと言うこともあります。きちんとした批評を書くには、そのためにかなりの下準備が必要そうな感じです。

今回はあまりそういうところに踏み込まないで感想を書きましたが、機会があったらその辺もやれると言いなと思います。

私は空海の描写も好きなのですが、当時の朝廷で苦悩する桓武天皇とかも好きなので、4巻からの展開(最初は安殿親王(後の平城天皇)と藤原薬子のくだりからはじまります)もとても楽しみにしています。
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