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個人的な感想です。

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さいとうちほさんの「とりかえ・ばや」第8巻を読みました。人は完全に生まれ変わることは出来ない、のですね。

さいとうちほさんの「とりかえ・ばや」第8巻を読みました。人は完全に生まれ変わることは出来ない、のですね。

とりかえ・ばや 8 (フラワーコミックスアルファ)
さいとうちほ
小学館


平安時代末期、源平合戦期に書かれたとされている「とりかへばや物語」を原作にさいとうちほさんが描かれている「とりかえ・ばや」ももう8巻になりました。

男の子のように育った沙羅双樹の姫君が男として帝の元に出仕し、女の子のように育った睡蓮の若君が女として女東宮の元に出仕する、と言うことからはじまったストーリーですが、今少し1巻を読み返していて、実は睡蓮には「月光(つきみつ)」という名が、沙羅双樹には涼子(すずしこ)という名があることを発見。最近は出てきていませんが、一応名前があったのですね。二人の父の名が「丸光」、叔父の名が「角光」ですから睡蓮が月光でもおかしくはないんですが、なんだか月光を浴びて夜花開く睡蓮、と言うイメージで上手くつけられた名なんだなと思いました。

物語は7巻で沙羅双樹と睡蓮が入れ替わり、睡蓮は右大将として帝の元に出仕し、沙羅は尚侍として女東宮の元に出仕することになりました。しかし、元々女らしいことを嫌って男として出仕していた沙羅がいきなり女性らしいことをするのは大変ですし、輝くような明るい右大将だった沙羅のあとに入った内気な睡蓮は元気がないと心配されて、お互いが大変な思いをします。

以下、8巻の内容に触れつつ感想を書きます。まだお読みでない方はどうぞそちらの方を先に読んでいただければと思います。

第8巻では、二人の入れ替わりを巡る問題がまた浮上。女なのに偽って叔父右大臣(角光)の娘・四の姫と結婚した沙羅双樹(睡蓮と入れ替わっている)が帰還したのを機に、右大臣は四の姫とのよりを戻させようとします。しかし、女東宮のことを思っている睡蓮は、右大臣から逃げ回っています。また、女東宮の元に出仕している右大臣の三の姫からその話を聞いた沙羅は「右大将と四の姫が復縁するなんて聞いてないよ」と思わず口を滑らし、それを聞いた女東宮も心痛を感じていることを察します。

しかし右大臣は二人の父の左大臣を訪ね、どうにか復縁してもらいたいと懇願します。ためらう睡蓮に、父左大臣は「これより先はそなたの人生じゃ」と言い、睡蓮に判断を任すと言うのでした。

自分の人生。睡蓮は、内気で女性のすることが好きだったから結局尚侍として出仕していたのに、運命のいたずらで男として生きることになった。その睡蓮が、自分の人生として生きる、と言うのはどういうことを意味するのか、と言うことですね。

もちろん、もう「女らしく」生きることは出来ない。それならば・・・うん。

さて、沙羅と四の姫の復縁の噂を聞いた石蕗の権中納言、彼は四の姫の二人の娘の実の父なのですが、は慌てて右大臣邸を訪れ、四の姫に会いますが、四の姫は「ぬしのまことなぞいらぬ」と言い放ち、来訪を拒絶します。四の姫キツいな、と思い、四の姫コワいな、と思いましたが、まあ仕方ないかな、という感じです。

入れ替わりに訪ねて来たのが右大将(睡蓮)。右大臣邸では一家を上げての歓迎ぶり、四の姫も打って変わって満面の笑み。睡蓮はたじたじとなってしまいますが、上の娘・雪姫は睡蓮を怪しんでいます。やはり子どもはごまかせない。二人きりになって、四の姫は睡蓮に謝り、下の娘の名は一人で(つまり石蕗と関係なく)珠子と名付けたと言います。睡蓮は、二人の娘の父である石蕗と復縁すべきではないかと四の姫に言いますが四の姫は強く拒絶し、まことの夫婦になりたい、と睡蓮を押し倒します。

四の姫ってほんと、可哀想な人なんですよね・・・でもその分、強い。額の傷から入内が叶わなくなり、最初は沙羅双樹が近づくことも拒否していた。しかしその気になっても沙羅は同衾せず(女性ですからね、本当は)、石蕗と不義をおかすことになり、それが露見して右大臣邸も追い出された。ようやく父の元に戻って来て、一からやり直そうとしてそういう行動に出た訳です。

しかし、睡蓮はそれを拒絶します。脳裏に浮かんだのは女東宮の顔と、「そなたの人生じゃ」と言う父の顔。結局は女東宮に操を立てて、「好きな方がおります」と告白します。

まあ、平安時代の貴族の貴公子がそんな発想をするかな、とは思いますが、逆に睡蓮であれば、女性の立場が理解出来る訳で、逆にそのように思ったのかな、と考えることも出来ますね。

それにしても、このあたりは原作ではなく、オリジナルなんじゃないかなという気がします。まだ原作を読めてないのでわかりませんが。

しかし、四の姫はそれならばなおさら離縁しないでくれ、石蕗を見返すまでは、というので、そんなに石蕗を愛しているのか、と理解した睡蓮は、あなたがいいとおっしゃるまで夫婦でいましょう、と答えます。四の姫は睡蓮に、「背の君はお変わりになられた。なお一層お優しくなられた」と微妙な顔で答えます。ここコワい。石蕗と別れ、夫にもふられ。でも真意を察せられて。どんなふうに思ってるんでしょう。ここはこの巻である意味一番印象に残った場面です。

でも四の姫の思い、一段落ついた感じはします。

宮中に暮らす女東宮と沙羅から見えるところを睡蓮が歩いて通り、それを女東宮は切ない顔をして見ている。女東宮と言うのも辛い立場で、沙羅はそれを見て同情します。

帝のもとで筝を弾け、と女東宮にいわれて練習するものの、女性の弾く筝は沙羅には不得意で、結局夜中に自分が元々得意な笛を吹きます。笛は女性は吹かないのですね。これは知りませんでしたが、いわれてみると確かに十二単で笛を吹くのは不自然な感じがしました。そしてそれを帝が聞く。沙羅双樹の右大将が宿直をしているのか、と思う、この展開は味わい深いです。

十日夜の宴の際、帝が東宮の舟を訪ねられ、睡蓮もそれに随行します。そこで束の間、睡蓮は女東宮と視線を交わす。しかし三の姫が四の姫と仲が良くて良い、などと言うのでちょっと東宮はすねた顔をします。帝に沙羅が亥の子餅を献上する際、風が吹いて舟が揺れ、餅をこぼして沙羅は帝に抱きかかえられます。

三の姫はなんとか帝のもとに入内したいと思っているので、帝に抱きかかえられたことで沙羅に抗議します。何というかこの人たちは気性が男っぽいので、裏でねちねちではなく二人で面と向かってそういう話をしていて、面白い。こういうのも原作にはないんじゃないかなという気がします。

で、結局「五節の舞姫」として二人が帝の前で舞って競う、ことになります。沙羅はまだ男装の時代、帝の近くに使え、信頼を置かれていただけに、今でも自分でも気づかない思慕を持っているのですが、自分としては性を偽って帝のもとに仕えていたという罪の意識と、石蕗の子を死産したという過去から、自分は決して入内など出来ない、と思っているのですね。しかし、誰が見ても三の姫よりも沙羅の方を帝は気に入っている。なので三の姫は思い切って、普通なら12〜3歳の娘がその訳をやる舞姫を自分がやる、と言い出す訳です。

というのは、実はこの時代から200年以上前なら、そういう例はあった。在原業平との恋で知られている清和天皇の女御・藤原高子は、舞姫を務めてから入内することになったのですね。そのエピソードも知りませんでしたが、そういう先例を踏まえてのストーリーなのですね。

何とかして三の姫に入内を譲ろうとする(深層心理はともかく)沙羅は一計を案じ、自分も舞姫を務めることにしますが、当のその日に病気だからと辞退し、三の姫のみが舞うことになります。三の姫は勝ちを譲られたことを悔しがります。

しかし帝は、睡蓮(実は沙羅)のもとを訪ねます。沙羅に迫る帝に、沙羅はとっさに「自分は子どもを産めぬからだだ」と嘘をつきます。しかし、帝はそれを察してか知らずか、沙羅を労って去ります。

一方女東宮は宮中でずっと気を張って過ごしていましたが、病に倒れ、父の朱雀院の元に宿下がりをすることになり、沙羅もそれに付き添うことになります。しかし、それを帝に告げに来た沙羅に、帝は「そなたを他の男にはやらぬ」と宣言します。

ここの場面、履物もはかずに中庭を横切ってそれを沙羅に告げに来る帝。これは興奮するなと思いました。この帝が沙羅に一途な思いを示すくだり、強い男性に強く思われるという、ある種の王道で、これは胸キュンだよなあと思いました。

朱雀院に宿下がりした女東宮は、沙羅を召しては睡蓮のことばかり尋ねます。沙羅は思い切って朱雀院で睡蓮と会えるように取りはからい、東宮もうきうきしてその夜を待つのですが、その日、たまたま帝の使いとして三の姫が現れ、帝の贈り物を受け取り、沙羅が感極まっている間に、おりあしく睡蓮が忍び入り、そこを三の姫に見つかってしまうのでした。

ここで8巻は終わりです。

・・・・・・それはないですよね。(笑)

さすがにこれは顛末が気になり、連載誌の「月刊フラワーズ」1月号(8巻の続きが掲載されています)を買ってしまいました。

というわけで、わたしはその顛末を知っているのですが、ここでは書きません。気になる方は9巻までお待ちになるか、フラワーズで読んでいただければと思います。

それにしても、性を変えて宮中に出仕して、そこで起こる悲喜劇を描いた作品だと思っていたのが、人が入れ替わってめでたしめでたしと思いきや、入れ替わったら入れ替わったことによる悲喜劇が続く。生まれ変わって自分の人生を生きる、とよくいいますが、完全に生まれ変わることはできないのですね。

生まれ変わる前の思いを持ち続け、そしてそれが緒になってさらに物語が展開して行く。そういう意味で、人生は完全にやり直すなんてことは出来ないんだなあとしみじみと感じさせられる展開でした。

女東宮は私の好きなキャラなのですが、今回は睡蓮に思い入れをしながら読んでました。この先、まだ紆余曲折がありそうですね。楽しみにしたいと思います。
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*Comment

 

匿名でごめんなさい。唐突ですが、私はこのブログが大好きです。大部分に「私も女東宮推しだから」という理由がありますが、それを抜きにしてもすごく分かりやすくて、なおかつ共感しまくりです。
もしよろしければ、この先の「とりかえ・ばや」についての感想も書いていただけないでしょうか?周りにあまり読んでいる人がいなくて、このブログを見つけたときに、「とりかえ・ばや」の喜びや悲しみなどを共有している気分になり、とても感動しました。このサイトのシステムがよく分からないのでお返事や、やりとりがうまくできないかもしれませんが、ブログ主様にどうしてもこの思いだけでも見ていただきたいと、コメントさせていただきました!!本当に唐突で失礼しました。
  • posted by  
  • URL 
  • 2016.12/13 18:43分 
  • [Edit]

Re: タイトルなし 

ありがとうございます。

というかコメントに気がつくのが遅れて申し訳ありませんでした。とりかえ・ばや、おもしろいですよね。女東宮推しですか。
同志がいてうれしいです。(笑)

そうですね、新巻を毎回買っているのですが、いつでも感想を書いているわけではないので、すみません。今度新巻が出たら頑張って書こうと思います。

フラワーズの連載を読むと、なんだかいい感じになってて、早くちゃんと正式に・・・それにはまず、沙羅に帝の子を産んでもらわないと・・・みたいなことを思っています。(笑)

お読みいただき、ありがとうございました!
  • posted by kous377 
  • URL 
  • 2017.01/02 17:35分 
  • [Edit]

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